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『並行世界(リアルワールド)』 「っ!?」 バードウェイは生まれて初めて、絶望を知った。 光の無い闇。 死を待つだけの無力感。 彼女に去来した感情が心を震わせた。 虚栄でもいい。 『明け色の陽射し』を統べるリーダーとして、年端も行かぬ少女は肩を張らなければならなかった。そうしなければ、周囲に認めてもらえず、自分の居場所が無くなってしまう。 法律も倫理も通用しない世界で生きていく為には、必要な「鎧」だった。 だが、絶対的なチカラの前では、全てが吹き飛ばされてしまう。 金と権力が人を狂わせるように。 一つの過ちが正義を悪に変えるように。 チカラは人の心を丸裸にする。 竜王の腕が迫りくる中、バードウェイは、死に怯えるただの少女だった。 バギンッ!!! だが、幾ら待っても死は訪れない。 「―――?」 涙で霞んだ瞳を開けると、彼女の眼前には一筋の光が見える。 『闇』に手を伸ばす一人の少年の姿が、そこにはあった。 その姿は、いつも、彼女が想う小さな勇者だった。 『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は全てを打ち消す。 竜王の腕が砕け散る。 学園都市全土を覆うほどの竜王の腕は、腕の形に圧縮された雲であり、幻想殺しによってただの水蒸気へと変わり、霧散した。肌寒い突風にドロシーは小さく声を上げる。 「きゃっ!?」 突如として、零度以下の風が吹き荒れた。 冷たい風が彼らを襲う。地上付近で発生した雲は、地熱で温められ、冷たい雨が崩壊した都市を濡らした。 右手を突き上げたまま、空に浮かぶ英雄。 周囲を見渡す。 「…これは、ひどいな」 海は荒れ狂い、大地は揺れ、空を歪んだ。 シンラのベクトル操作で空中に舞い上がっていた上条当麻は、静かに降り立った。 少年は紅い空を見上げた。 螺旋状に霧散した雲。 紅い月が世界を照らし、地上は鮮血のように染められている。 世界を破滅させる大魔術、「神戮」は既に第三章に突入していた。 竜王の腕を形成するために、莫大な水蒸気が凝縮された。気候を大きく左右する雲が意図的に操作されたことによって、地球の環境が変動し、生態系に大きな影響を及ぼすことなる。 上条当麻は知覚する。 学園都市だけでは無い。戦争の余波は世界中に広がってしまった。 被害を最小限に抑えるために、周到な準備を行い、雲川芹亜を中心にして戦略を練った。神上派閥を総動員し、学園都市、ローマ正教、イギリス清教や様々な組織に協力を得て、事を起こしたというのに。 「くそっ…!」 世界を託された重圧が両肩にかかる。神上派閥の総帥として動いてきた上条当麻は、悔しさに唇を噛みしめた。 「……当麻」 恋人の背中に、御坂美琴は声をかける事が出来なかった。どんなに優しい言葉をかけても、人一倍責任感の強い彼には、慰めにならない。どのような厳しい言葉をかけたとしても、それは重みの無い言葉となってしまう。 だが、上条当麻に消極的思考(ネガティブ)は似合わない。 「…待てよ」 幾つもの死線を潜り抜けてきた少年は、逆転の勝機を見出した。 指をコキコキと鳴らし、 「…一か八かだ」 「『現実守護(リアルディフェンダー)』、『幻想守護(イマジンディフェンダー)』を解放する」 右手の『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が次元を越える。 ビシリ、と空間に穴が開いた。 瞬間、ドバァッ!と膨大な光が噴出する。 上条当麻を囲むように見ていた魔術師や能力者は目が眩んだ。闇夜に目が慣れ、瞳孔が開いていた事もあり、光の漏洩を直視できる者はいなかった。 少年は、その歪に右手を突き刺した。 インデックスは驚愕する。 「まさかっ…!」 「…ドラゴンは世界と同化したのならば、地球上の全てがドラゴンだ。ならば、いつ何時でも、そこに『在る』ってことだよなぁ!!」 『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が「核」を掴む。 光の中から、一人の青年が引き摺り出された。 凹凸の激しいアスファルトの地面に、青年が転がる。 黒で統一された長点上機学園の制服に、砂利が付着した。頭痛のせいか、青年は頭を押さえながら立ち上がった。 ツンツンとした黒髪。 一七八センチの背丈。 御坂美琴とお揃いのピンクマリンゴールドのネックレスを下げ、深紅の瞳が宿った『上条当麻(ドラゴン)』がそこに存在した。 「き、貴様ァ…!」 「そもそも「神戮」なんて起こす必要も無い。普通は神が地上に現れただけで、『カバラの樹(世界の法則)』は捻じ曲げられ、世界は崩壊する。 でも、世界は壊れなかった。つまり、俺の肉体を素体としてドラゴンは世界の矛盾を防ぎ、自分自身を召喚していた。 違うか?―――ドラゴン?」 「…!」 右足を軸に回し蹴りが放たれる。 上条当麻は両腕で防いだ。 「つぅ…!」 バッドで殴られたような衝撃が、二の腕を襲う。膝が軋んだ。 (流石は俺の体。柔道、合気道、空手、ボクシング、プロレス、コマンドサンボなどなど…あらゆる格闘技と体術、そして殺し合いの実戦で鍛えてるんだ。やっぱ伊達じゃねえな) 己の肉体を自画自賛しつつ、冷静な思考で敵を分析する。 今、眼前に立ちはだかるのは自分自身。 上条当麻は、不思議な感覚を覚えた。 (…怖えーツラ、ドラゴン完全にぶち切れてるよ…だが、中々イケメンだな、俺!) 一年前の上条当麻の身長は一六八センチで、現在の身長よりも一〇センチ低く、体重も一〇キロほど劣る。故にリーチもパワーもハンデがある。 だが、 「ぐはっ!」 技術は、積み重ねてきた努力は、魂に刻まれている。 バギンッ!と拳がぶつかり合う。背の低い上条当麻は腰を屈め、正拳を鳩尾に叩き込んだ。 『竜王の鱗(ドラゴンアーマー)』が破壊される。 ドラゴンは世界から魂を乖離された反動でダメージを負い、反応も鈍い。 「ごぼっ…!」 次々と繰り出される拳。 「ふ」 地を這いずる様に逃げるドラゴンは、上条当麻に砂利を投げつけた。 ドラゴンの逆鱗に触れる。 「ふざけるなァ!余が、きっ貴様ら人間如きに屈するか!余は『竜王(ドラゴン)』!神殺しの神と畏怖された唯一無二の存在!」 ドラゴンは叫んだ。服は汚れ、顔は泥と血が混ざり合っている。 竜王は、この世で怪物と恐れられた魔術師たちを手玉に取り、『一方通行(アクセラレータ)』をいとも簡単に死地に追い詰めた。『魔神』と呼ばれた禁書目録でも、竜王の前ではただの少女になり下がる。 かつて、魔術と科学の亀裂が顕在化し、『戦争』が勃発した。 戦力としてヨーロッパに派遣された能力者の子供たちは、兵士として、人を殺した。 魔術師を殺した。 神父を殺した。 聖人を殺した。 スパイを殺した。 歯向かう者は女子供であろうと容赦なく殺した。 そして、同時に殺された。 少年少女たちは学園に命令されるがままに能力を振るい、人を殺し、魔術の存在すら知らずに殺された。 生きたまま、精神が殺された者も多かった。 二人の『超能力者(レベル5)』を失い、四〇〇〇人以上の『妹達(シスターズ)』も命を落とした。 同じく、送り出された魔術師たちによって、学園都市も戦場と化していた。 学園都市第一位の超能力者は敗北し、守るべき少女は息を引き取る。 怒り、悲しみ、憎しみ、痛み。様々な感情が交錯し、とある少年の感情に蓄積する。幾多の戦いを乗り越え、苦しみを乗り越え、近しい者の死を受け入れ、大魔術師が長い月日をかけて肥やした土壌は、成熟期を迎えた。 魔王を倒すため、人々が一振りの聖剣を鍛え上げるように。 世界の危機が、英雄を生み出すように。 『竜王(ドラゴン)』は現れた。 覚醒した神は、全てを圧倒し、支配し、蹂躙した。 抗う事さえ愚かに思えるほどの絶対的な存在。 其の頭は、万物を理解する。 其の腕は、万物を創造する。 其の体は、万物を拒絶する。 其の足は、万物を超越する。 そのドラゴンが、追い詰められていた。 顔は泥で汚れ、長点上機学園は土色に染まっていた。地べたを這いつくばり、怯えた表情で上条当麻を見つめている。 震える手で、ベレッタW78を上条当麻に向けていた。 「当麻!」 「手出すなァ!美琴ォ!」 大声で御坂美琴を制す。 御坂美琴が使い捨てていた拳銃をドラゴンが拾ってしまった。 完全な失態だった。 彼女は自責の念で心を締め付けられる。 上条当麻は、 「情けねぇ…」 声を張り上げた。 「そんな銃じゃ俺は殺せねぇよ!」 バァン! 銃声が轟く。 彼らを見守っていた人々に緊張が走った。 御坂美琴は激情に駆られ、ドラゴンを射殺してやろうとホルスターから拳銃を引き抜くが、『一方通行(アクセラレータ)』がベクトル操作で彼女を拘束する。怒りで思考が沸騰した。 「何すんだぁ!殺されたいのか!シンラァッ!」 「黙って見てられェのか?テメェは」 「んだとぉっ!」 口から発生する波動を全て『反射』に切り替え、御坂美琴の叫び声を消した。 「当麻が死ぬわけねェだろうがァ」 半狂乱に陥っている御坂を無視し、白髪の少年は親友の決着を見届ける。 銃弾は上条当麻の頬を掠め、空を突き進んでいっただけだった。 「生まれてこのかたいくつもの不幸を味わって、もう慣れっこなんだよ!俺の肉体に宿ってしまった事が、「不幸」だったなぁ!」 上条当麻は拳を振り上げる。 ドラゴンは立ち上がり、拳を握りしめる。 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」 「上条当麻ァああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 二人の拳が交差し、 ガツンッ!と。 顔面に突き刺さる。 魔術師と能力者が見守る中、瓦礫と土で出来たリングでの肉弾戦は一時静止した。 全力の右ストレートを額に受けたまま、微動だにしない。 ドロリと、二人の顔面に血が伝う。 「―――――――――」 「――――――――」 『神』と『人間』は言葉を交わす。 そして、 「お前の負けだ。ドラゴン」 『竜王(ドラゴン)』は崩れ落ちる。 『神』は敗北した。 上条当麻の胸に、意識を喪失した青年は倒れ込んだ。 紅い月は光を失う。 「神戮」は解除され、世界の破滅は止まった。 周囲は歓喜に満ちる。 だが、 「な、なに?」 ゴゴゴゴゴ…と鳴る地響きに、シルビアはいち早く気づいた。 地震では無い。 世界は在るべき姿に戻る為、修正が始まったのだ。 いつの間にか発生した光り輝く霧は、急速に広がり、濃度も急激に上がる。彼の勝利をたたえ、上条当麻の元へと駆け寄っていく仲間の姿が光に塗り潰されていった。視界だけでは無く、音も遠ざかっていく。少年は『幻想殺し(イマジンブレイカー)』と呼ばれる右手を見た。 右手の輪郭が徐々に薄れる。 視界が光に包まれていく中、上条当麻はそっと笑みを零した。 『並行世界(リアルワールド)』 Epilogue 第三学区。 日は落ち、学園都市は既に夜になっていた。 セブンズホテルの最上階のスウィートルーム、プリズムルームにある大きなソファーに、雲川芹亜は深く腰かけていた。タオルで汗を拭き取り、テーブルに投げ捨てる。 ようやく、長い一日が終わる。 多くの能力者と、多くの魔術師を動員し、神を滅ぼす『戦争』は幕を閉じた。 先ほど、意思体の交換が終了し、一年前の上条当麻の肉体を『並行世界(リアルワールド)』によって無事に返還したと報告が来た。 『並行世界(リアルワールド)』作戦は成功した。 半年前から動き出していた計画に終止符を打ち、ようやく緊張から解かれた彼女は、大きな深呼吸を繰り返す。 「お疲れさま」 黒スーツを着込んだ金髪グラサンは、彼女にコーヒーを手渡した。雲川はそれを受け取り、口に含む。ミルクと砂糖が多く入っており、甘い味覚が舌を刺激する。 「…本当に忙しいのはこれからだ。既に根回しは終わっているが、経営機能を失った企業を買収し終えるまで気が抜けない。この戦争の被害を利用しない手は無いからな。神上派閥を拡大させるためには又と無い大チャンスだ。目標値に達するかどうかは蓋を開けてみなければわからんが、戦後にアレイスターがやった買収行為。そのままそっくり真似させてもらうよ」 「ブレインは大変だにゃー」 口の周りに付いたコーヒーの泡を吹き取りながら、 「ま、やりがいはあるけど…貴様に言っておく」 「任務終了だ。「土御門元春」のふりはもう止めろ」 雲川は、眼前に立っている青年に告げる。 彼は柱の陰に隠れ、サングラスを外す。 途端、パリンと何かが割れたような音がした。 金髪が黒髪に変わり、彼の素顔は影に潜めた。 雲川芹亜の場所からでは、彼の顔が分からない。 「…上条様には、本当にお優しいのですね。貴女は」 彼女はその問いに答えなかった。 土御門元春は、既に死んでいる。 『戦争』が勃発する直前、彼は裏の世界で命を落とした。 義理の妹に告げること無く、優しい嘘をつきながら、上条当麻の腕の中で息を引き取った。 一年前の上条当麻には教えてはならない情報だった。故に、『肉体変化(メタモルフォーゼ)』の「彼」が死人の役割を担ったのだ。 「……土御門の死は、必要な犠牲だった。でなければ、ドラゴンの覚醒は…」 「私は上条様に命を救われました…こんな私にも、生きる理由と帰る居場所を与えてくれた。能力ゆえに、利用されるだけの人生でしたが、人のために尽くしたいと思ったのはこれが初めてですよ」 「…それが意中の人の為だと尚更だよ。私は総帥の悲しむ姿は、もう見たくは無いんだ……」 「貴女こそ、上条様に相応しい方だと、私は思っていますよ」 「…ありがとう」 雲川芹亜は、年相応の笑顔をこぼした。 『並行世界(リアルワールド)』 Epilogue 数日後。 第七学区内で最大規模を誇る病院のとある病室。 茜色に染まる日の入りを一人占めできるという西側の個室であり、関係者の間ではいわくつきの病室だと噂されていた。 その病室とは、事あるごとに戦いに巻き込まれ、ギネス級の入退院を繰り返していた上条当麻の専用室と化してしまった病室であり、彼が入院していなくとも「上条当麻」のネームプレートを看護士が外さなかったほどだ。 彼が入院するたびに医療機材が増え、現在ではICUと遜色ない設備が整っている。それと同等に、六五インチのテレビや最新のゲーム機といった嗜好品も数多く揃っており、一般患者が多い同階の病室では一際異彩を放っていた。 「二三学区に最新鋭の兵器が非公式にあったらしくてね?被害総額は八〇〇兆円ほどだって、聞いたよ?」 「…マジですか?」 カエルのような顔をした医者は、ベッドに横たわるパジャマ姿の上条当麻に声をかけた。 テレビから流れてくる情報は、世界各地で起こった超常現象の報道ばかりで、チャンネルを切り替えても内容はほとんど変化が無い。テーブルに置かれている新聞も同様だ。 公式見解では、『樹形図の生計者(ツリーダイグラム)』の後継機である『大いなる母(マザー)』が超常現象の危険を事前に察知し、アレイスター学園長指揮の元、二三〇万人を避難させたとの事だった。だが、各学区に残る不自然な痕跡から、これは超常現象ではなく、人為的に起こされたものではないか、という話も浮上し、人々の噂が噂を呼び、報道だけではなく、ネット上でも話題を独占していた。 「これ以上、ニュースを見るかい?」 「…結構です」 リモコンを操作して、テレビの電源を切る。 コンコンと、ドアをノックする音が聞こえた。この時間に来訪する人間は一人しかいない。 「あんな可愛い子に心配をかけちゃいけないよ?」 「…すいません」 「それは美琴ちゃんに言うべきだね?」 カエルのような顔をした医者は、ドアを開ける。 彼らの予想通り、手に小箱を持って見舞いにきた御坂美琴がいた。 常盤台中学の冬服の上に、至宝院久蘭と同様の黒のマントを羽織っている。茶髪のロングヘアーに、誕生日プレゼントとして上条当麻からもらったヘアピンで前髪を留めていた。 「いつも当麻がお世話になってます」 「…いきなり何言ってんだ。母親かお前は」 「恋人よ。馬鹿」 二人のやりとりを見て、カエルのような顔をした医者は小さな溜息をつく。 「君たちの事は知ってるけど、仲が良いのもほどほどにね?分かってると思うけど、君たちはこの学園都市を代表する生徒だからね?」 「はい。十分承知しています。先生」 「美琴ちゃんからも当麻君に言っておいてくれないかな?君とは違って、ちょっと物分かりが悪いからね?」 「ちょ!?本人の目の前で、何言っちゃってくれてるんですか先生!」 「それと、彼、明日退院だから」 「シカト!?」 『並行世界(リアルワールド)』 Epilogue 箱をテーブルの上に載せる。銘柄から、美琴が贔屓しているケーキ屋の名前だとすぐに分かった。御坂美琴は花瓶に生けてある花に目を通し、その隣には、一体どれほどの人が見舞いに来たのだと言うくらい、山のように積まれたフルーツの籠がある。 彼の顔は広すぎる。御坂美琴は改めて認識させた。 「額の傷は、そんなに酷いんですか?」 巻かれている包帯を見て、御坂美琴は言った。 平静な声だったが彼女は本当に彼の事が心配なのだろう、と医者は思った。人一倍向う見ずな性格をしている彼が、今まで肉体に後遺症を残さず命を落とさなかったのは、彼女のおかげだ。そう思い、カエルのような顔をした医者はそれが杞憂であることを正直に告げた。 「治療と言うより、検査かな?目立った外傷は殆どなかったからね?」 「…そう、ですか」 御坂美琴は安心した顔で、胸を撫で下ろした。 果物で溢れかえっている籠の中から、御坂美琴はリンゴを取りだし、慣れた手つきで、リンゴの皮を果物ナイフで剥き始める。 「何だぁ?美琴。この世界の英雄、上条当麻様がかすり傷くらいでどうかなるとでも思ってたのかぁ?心配性だな。美琴は」 「…分かってるなら、ちょっとは無傷で帰ってきなさいよ!」 ザクッ!と果物ナイフをベッドに突き立てる。上条当麻の右手の人差し指と中指の間を縫うように刺さった。 「うおっ!?」 「今のは当麻君が悪いね。ちなみに破れたシーツ代は後で君に請求するから」 「マジッすか!?いじめ?これいじめですよね?なんたる不幸!」 うがー!と両手で頭を抱える少年を見て、 「今回の事は、統括理事長から聞いたよ。世界を救ってくれたことに僕からもお礼を言わせてもらう。ありがとう。当麻君」 カエルのような顔をした医者は、深く頭を下げる。 その姿を見た二人は、少々面を食らった。 「こちらこそ…なんか、慣れないんですよね。こういうの」 上条当麻は視線を逸らし、頬をかく。何照れてんのよ、と。美琴は彼の頭を小突いた。 「あと、あしたはこっちの病院にはいないから、見送りは出来ないんだ。会う機会も少なくなるだろうから、先に言っておくよ。お大事にね」 カエル顔の医者は、ドアを閉めた。 君が患者になることは二度とないだろうから…と告げて。 『並行世界(リアルワールド)』 Epilogue 「貴殿にしては、例に見ない愚策であったな」 「―――そう言うな。君に比べれば、私の謀略など子供の遊戯程度にしか見えない事は分かっている」 「なに、そう自分を蔑下するでない。長い月日を生きていた余でも、貴殿ほど存在に狂った人間は見た事が無いぞ?」 第七学区。 窓の無いビルの中で、聖人とも悪人とも、男であり女であるような人間は、緑色の手術衣を着て、弱アルカリ性培養液に満たされた巨大ビーカーの中に逆さに浮いている。 推定寿命は一七〇〇年程。 世界最高の科学者である一方で、世界最高最強の魔術師でもある、学園都市総括理事長アレイスター=クロウリーは、視線の先にいる者と会話をしていた。 「AIMといったか?『神の物質(ゴッドマター)』を地上に振りまく濃度を観測する基準は」 「…君の予想通りだよ。神々が存在し、神の肉体を構成する『神の物質(ゴッドマター)』を地上で満たし、『神の世界(ヴァルハラ)』と同等の土壌を築き上げるために、大量の人間に「開発」を行っていた。 『神の物質(ゴッドマター)』の残滓とはいえ、本質は『思考によって変化する物質』。 『自分だけの現実』を強めれば『副産物(のうりょく)』は出現する。故に、現実を直視する者は、『自分だけの現実』が「有り得ないモノ」もしくは「現実で不可能だ」という思考が無意識に働いていてしまい、能力は弱体化する」 「『無能力者(レベル0)』とは、身分不相応な願望を持たない現実主義者(リアリスト)というわけだな。 ゆえに、夢や希望を信じて疑わない子供を使ったのか。 すなわち、高位能力者ほど、稀有なる誇大妄想家ということになるな …だが、余の見てきた大義を成す人間は、大抵がそういう者ばかりだったぞ? 唯の妄想家と、偉人と呼ばれる人間の違う点を挙げるとするならば、如何ようにして願望を実現できるかを理論的に考え、実行しているか否か、という点においてのみだ。 まぁ、科学も穴だらけの空論だ。現象を文字や数字に代用しなければ共通の理解を得られない人間の限界を、余は承知しているつもりだが?」 自身を『余』と名乗る者は、言葉を続けた。 「これからどうするつもりだ?アレイスター」 「――さて、どうするかね?君は、私に何を望む?」 「つまらぬことを聞くな。魔術師。心は貴殿の宝であろう?余の関することでは無い。この酔狂な街をどうしようが、貴殿の勝手ではないか…ただ、余にも守るべきモノはある。それだけだ」 「学園都市は潰さないさ…何時の間にか、この箱庭には随分と愛着が湧いてしまったからね」 「手間のかかる矮小な存在ほど、可愛いものだからな」 ククク…と、其の者は声を小さくして笑う。 アレイスター=クロウリーは告げる。 「どうだ?上条当麻。『神上(レベル7)』となった気分は?」 窓の無いビルの中で、学園都市総括理事長と対等に会話する少年。 身長は一七八センチ。 ツンツンとした黒髪。 長点上機学園の制服。 「―――っ…悪い。アレイスター。記憶の混濁が激しくて……危うくドラゴンに呑み込まれそうになってた」 頭を押さえる上条当麻が、そこにはあった。 「パーソナルリアリティを確立しろ。自我を保たないと、人間一人の思念体など、容易く飲み込んでしまうぞ。『竜王の顎(ドラゴンストライク)』から流れる情報は莫大だ。過去、未来、現在すら、区別がつかなくなってしまう」 そう、これは雲川芹亜すら知らない。 『竜王(ドラゴン)』は『上条当麻』と完全に同化した。 『The Real World Project』の最終目的はここにあったのだ。 ドラゴンは、元来から天界に存在する神ではなく、地上に存在する異端の『神』であり、その存在は「地に堕ちた天使」、すなわち『堕天使』のエイワスと酷使している。 そもそも、死の概念が無い「神」を殺すことはできない。 人が同じ過ちを繰り返すように。 神とは人の恐怖の対象であり、いずれそれが形となって、再構築される。 『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が打ち消したのは『竜王(ドラゴン)』の破壊本能であり、肉体は残留していた。 意思体を失った世界最強の能力は、そのまま上条当麻という器に内包される。 ゆえに、『神上(レベル7)』。 神を殺し、神を越えた存在。 「神になったっていう感覚はイマイチなんだけど、人間じゃ無くなったっていう感じの方が大きいかな。アレイスターを見てるだけで、アレイスターがどんな過去を生きてきたのかっていうことが手に取る様に理解(わか)るんだ。この防壁の構成要素も、製造過程も、粒子の一つ一つが辿った歴史も…未来も」 「私の死も理解(わか)るか?」 上条当麻は頷く。 「…ああ、理解(わか)る」 そっと、アレイスターは瞳を閉じた。 (自分の未来は聞かないでおこうか…)とアレイスターが言ったかどうかも定かではないが、上条当麻は彼の意思を理解した。 次に放たれる言葉すらも理解し、 「『超電磁砲(レールガン)』を選んだ理由もあるのかな?」 鼓膜が震え、上条当麻はそれが発せられた言葉だと認識する。 「…美琴と禁書目録が対立する前に、美琴を選ぶのが最良の選択だった。一歩間違えれば、インデックスが美琴の存在を抹消したり、一〇〇人を越える女たちが、公式に殺し合いを始める未来すら在った……『竜王の顎(ドラゴンストライク)』がそう教えてくれる。 そして、ドラゴンは疲れていた。 人間が繰り返す歴史に、嫌気がさしていたんだ。 人間を滅ぼしてしまいたい気持ちも、理解(わか)ってしまう…だから、ドラゴンは、俺に託したんだ。神としての役割を…」 最期に交わした言葉を上条当麻は思い出す。 『余の代わりに、永遠の時を生きよ……神浄の…討魔』 「…やはり、ドラゴンは自ら殺されたがっていたわけだな…確かに、ドラゴンの余興に付き合うという点では理解したが…あのような作戦でドラゴンを殺せる訳は無い」 上条当麻の脳内では、見た事の無いビジョンが流れ出す。 それは人がまだ言語すら知らない時代から、今現在まで辿ってきた歴史。 人は笑い、悲しみ、憎しみ、愛し、築き上げてきた世界。 上条当麻の瞳に、うっすらと涙が溜まる。 誰の為に流した涙なのか、彼自身は理解しようとしなかった。 「…これからは長い付き合いになりそうだな」 「互いに有益な関係であることを望むよ。出来れば未来永劫にね」 時すら越える『空間移動(テレポート)』の究極能力、『竜王の脚(ドラゴンソニック)』が発動する。 音も無く、影も無く、窓の無いビルから「上条当麻」は消え去った。 『並行世界(リアルワールド)』 Epilogue 再び、場所はとある病室に戻る。 二日前、アレイスターと交わした言葉が何故今、頭をよぎったのだろうと上条当麻は思いながら、 「あれ?」 御坂美琴の胸に手を伸ばす。 もにゅ。 時は夕暮れ。 昼間は彼女が買ってきたショートケーキを食べながら、御坂美琴の常盤台中学での話を聞いていた。混乱に乗じて事件が多発している事や、校舎の半壊で長点上機学園は無期限の休学になっていることなど、話す話題は尽きない。 夜は『並行世界(リアルワールド)』作戦成功を祝い、学園都市最高峰の『エドワード・アレクサンデルホテル』のホールを借りて、立食パーティーが催される予定だ。 上条当麻と御坂美琴は恋人同士である。 名目上、 少年は長点上機学園高等部二年。『絶対能力者(レベル6)』第一位。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』。 少女は常盤台中学三年。『超能力者(レベル5)』第一位。『超電磁砲(レールガン)』。 両名とも学園都市を代表する生徒であるが、それを除けば年相応の少年少女であり、格好良くなりたい、可愛くなりたい、オシャレもしたい、異性は気になるお年頃である。 個室に二人きりで、それが恋人同士になれば行動も自ずと限られてくる。 「…あっ、ん…どうしたの?」 「おっぱい大きくなった?」 「え?わかったの?服の上から?」 「ああ。俺、美琴のおっぱい大好きだからな」 「…おっぱいだけ?私は?」 「愛してる」 歯が浮くようなセリフは、ストレートなだけに絶大な効果がある。上条当麻はそれを肌身で感じていた。 彼女は当麻、と彼女は言おうとしたがそれ以上は言えなかった。 美琴の唇は塞がれてしまったからだ。 当麻の舌は美琴の口に入り込み、それを彼女も受け入れた。丹念に舌を絡め、熱いキスを交わす。 唾液に熱が加わり、それに合わせて当麻は胸を強く揉み始めた。 「ちょ…んふ、と…ちゅ、ちゅ…とうまぁ、少し痛い」 「ごめん。久しぶりだから我慢できねえ」 当麻は再び美琴の唇を貪り始め、強引に舌をねじ込ませた。そのまま彼女の体を反転させ、ベッドにゆっくり押し倒した。当麻が美琴に覆いかぶさるような体勢になる。 慣れた手つきでニットの下から手を入れて、シャツのボタンを外していく。その隙間から桃色のブラジャーを搔い潜り、素肌を貪った。 「やっぱり…大きくなってる」 「エッチ…ん、ふぬっ、あ、む、むちゅ…」 美琴の唇から口を離した当麻はフレンチキスを数回した後、頬、顎、首筋にキスをしていった。柔らかくてザラザラとした舌の感触が美琴の脳を刺激する。 「美琴」 当麻の声が下から聞こえた。彼のツンツンとした黒髪が美琴の顔に当たる。 「ん…なに?」 ボタンを外し終えた当麻はさり気無く両手を背中にまわして、美琴を抱きしめていた。本当はブラジャーのホックを外すためだったが、彼女の体温を感じた当麻は無意識的に抱擁していたのだ。 「来週の土曜まで溜めておくつもりだったが、上条さんはもう限界です」 「…だろうと思った」 美琴は当麻の髪を優しく撫でながら彼のことばを待った。 「今日はスゴイですよ?」 「あ…」 「どうしたの?」 上条当麻は周囲を見渡し、 「この部屋、カメラとか付いてないよな?」 御坂美琴は肯定した。 「あるわよ」 「マジで!?」 しかし、彼女は前髪に静電気を立てながら、不敵な笑顔で言った。 「…私がこうなることを予想してなかったと思う?」 「美琴、大っ好きだー!」 「きゃーっ!」 彼女に勢いよく襲いかかった上条当麻は、シャツを脱がせ、ブラジャーのホックをはずした。 彼の欲望は今から満たされようとしている。 「な・に・が・大好きなのかなぁ?とうまぁ?」 世界が止まった。 上条と御坂は即座に凍りついた。 「インデックスさん…人が悪いですよ。私はあと二時間ほど待ってたほうがいいと言ったんですが…ひぃ!」 「何?私に逆らう気?」 「……いえ。何でもありません」 御坂美琴はあわててシーツで上半身を隠し、おそろおそる上条当麻が振り向くと、 ブチギレ気味のインデックスと。 冷や汗をかいているアニェーゼ=サンクティスと。 現場を直視できない神裂火織がそこに佇んでいた。 「…ノックは?」 「したよ。三回も。なのに、とーまとみことちゃんはラブラブちゅっちゅっしてて気付かないんだもん」 うっ…!と黙り込む二人。 「私が気付かないと思った?匂いとかシャワーで…前からバレバレなんだよ?」 銀髪碧眼のシスターのこめかみに青筋が浮き出ている。 対処を間違えれば、『竜王の殺息(ドラゴンブレス)』が撃たれかねない、と上条の能力が教えていた。 「ご、ごほん!その、貴方とその彼女が、そ、あ…だ、男女の関係だということは知ってました、が…」 知人の情事を間近で見るのは…その、とても恥ずかしいというか…だろう。 神裂の続く言葉は分かる。 実は神裂火織とのキスが上条当麻のファーストキスだったりする。 思わぬアクシデントだったとはいえ、唇が触れあったのは確かだ。それ以来、どことなくギクシャクしていた。そんなことは死んでも美琴には言えないが、と上条は思った。 突如、 「当麻さぁぁああん!」 と、彼に跳び込むように抱きついた少女がいた。 「ごめんさない!ごめんなさぁあい!」 上条のパジャマにしがみ付き、泣きじゃくっていた。入院しているのか、所々に包帯が巻いてあり、水色のパジャマを着ている。髪はショート。二重まぶたが印象的な女の子。 「…五和」 上条当麻は腹部に柔らかい感触を感じつつも、理性を保つ。 御坂は少々を面くらったが、彼女の心情を察し、手を出さなかった。 五和は顔を上条の胸にうずめたまま、謝り続けた。 そんな彼女の髪を、優しくなでる。 「五和が謝る事は何もない。むしろ謝るのは、俺の方だ。皆にたくさん迷惑をかけちまった」 彼の言葉に、五和が顔を上げる。 瞼には涙の痕がある。一人で泣いていたのだろう、上条は思い、優しく頭を撫でながら、微笑みかけた。 彼女の顔に、徐々に生気が戻る。 そして、目つきが険しくなったと思うと。 「当麻さん…私、やっぱり諦められません」 と、告げた。 「へ?」 何かを決意した目だった。 そのまま上条当麻の顔を両手で掴むと、 「貴方が、好きですっ!」 チュッ。 五和は愛の告白と同時に、情熱的なキスをした。 「ちょっ?!」 恋人の唇が目の前で奪われ、御坂美琴は素っ頓狂な声を上げる。 『あーっ!!!』 と、インデックスやアニェーゼ、後ろに控えていた『新たなる光』のメンバーが声を上げるが、時すでに遅し。五和の大胆な行動に、神裂火織は茫然としていた。向かい側のビルから双眼鏡で覗いていた天草式十字凄教のメンバーが、「うおおおおおおっ!修羅場キタ――(゜∀゜)――!」と喝采を上げていた事には誰も気づかない。 「責任とって下さいね♪」 「何言ってんのよ!五和!というか当麻から離れろぉ!」 はっとした御坂は五和を恋人から引きはがそうとする。 こんな時でも、病院内ということで雷撃を発生しないのは流石と言うべきだろう。 「聞いたよ!とうま!五和とデ、デデ、ディープキスしただけじゃなくて、裸まで見たとか!」 その言葉にビクン!と反応した御坂美琴は、ジロリと、座った目つきで上条当麻を睨みつけた。 うーん…と、甘える声を出しながら、五和は抱きついたままだ。 上条はダラダラと冷や汗を流しはじめる。 「ねぇ…どゆこと?」 「いや、それは俺じゃなくて、ドラゴンの仕業でっ?!美琴!」 グイッ!と襟元を掴み、強い力で引っ張られる。彼女の瞳にはうっすらと涙さえ溜まっている。 少年は慌てた。 「もう許さない!私と別れるか、皆の前で最後までヤっちゃうか!どっちにする!?」 「そんなことしたら、美琴の裸が皆に見られるんだぜ?!そんなことできるか!」 「じゃあ別れるのね?!私のこと、遊びだったんだね?!当麻に私の初めてを全部あげたのに!」 「やっぱり一年前とちっとも変ってないかも!むしろ肉体関係が絡んでるからもっとサイアク!とうま!とうまにはお祈りの時間を与える余地も無いんだよっ!死刑!生きたまま噛み殺す!」 「ああっ!カオス!本当にカオスってる!もうどぅすりゃいいんだよぉぉおおお?!!」 「うわーん!当麻の馬鹿ああああああああああああ!」 ズバン! バチィ! ドガァァッ! とある病室は木端微塵に破壊された。 『並行世界(リアルワールド)』 Epilogue 時刻は一九時を回っていた。 第三学区の『エドワード・アレクサンデルホテル』の三階にあるフロアを仕切って、立食パーティが行われていた。各国から名立たるシェフが集い、古今東西の料理が並べられている。 「これなに?」と物珍しそうに料理を眺めるアンジェレネもいれば、片っ端から腹に詰め込む暴食シスターもいる。総数は一〇〇〇人強と多く、畏まったフォーマルな雰囲気は無く、どちらかというと打ち上げのような賑やかな空気に包まれていた。修道服を着ている者もいれば、学園都市の制服を着ている人もおり、そこに科学と魔術の垣根など無い。力を合わせ、世界を救ったという連帯感が彼らの心を一つにしていた。「これが噂のライスケーキであるのよ?」と生ハムとチーズを包んだ餅を口に入れ、『最大主教(アークビジョップ)』が喉に詰まらせ、あたふたするステイルの姿もあった。 主役である上条当麻は、多くの女性からあからさまなアプローチを受け、その度に受ける電撃を打ち消していた。 学園都市を一望できるラウンジで、会場から一杯のオレンジジュースを飲みながら、 「…で、俺の借金はさらに増えるのでした…と」 「なに独り言を呟いてるの?友達イナイイナイ病が発症しちゃってるわけ?…まさか、お酒飲んじゃった?」 「んな訳ねーだろ。カミジョーさんは未成年ですよ?」 ツンツンのヘアスタイルでは無く、オールバックの髪型にワインレッドのネクタイに黒スーツ姿の上条当麻の隣には、白のドレスを身に纏い、化粧でその美しさに磨きがかかっている御坂美琴が立っていた。茶髪のロングヘアーにウエーブをかけ、胸元にはピンクアクアマリンゴールドのネックレスが輝いている。 「破壊されたあの医療機材、全部で六〇〇〇万円もするんだって…」 「八〇〇兆円に比べれば、大した金額じゃないでしょ?被害総額とか、既に天文学的数字だからね。でもその分、復興資金が潤っているみたいじゃない?」 「…神上派閥の組織がどんどん増えるわけだよな。ビジネスの恐ろしさを改めて身に感じてるわけですよ。経済学もすこしかじってるから」 長点上機学園でのカリキュラムは普通の高校過程と異なるが、彼のカリキュラムは雲川の助言の元、武等の他に、各国の財界人との会合も頻繁にある為、帝王学や上級社会のマナーも授業に組み込まれている。 そして、御坂美琴は常盤台中学の授業に加え、彼に並び立つに相応しい女であろうと様々な分野を学び、二人は多忙な日々を送っていた。 故に、会える機会には激しく求め合う。 口紅が付くのも厭わず、上条当麻は恋人と唇を重ねた。 「来週の土曜…覚悟しろよ?」 「それは私と遊園地に行くこと?それとも夜のこと?」 色々と特殊なカップルだが、蓋を開ければ一七歳の少年と一五歳の少女である。 「どっちもだ。馬鹿…好きだよ。美琴」 「私も。愛してる。当麻」 どちらともなく無言で見つめ合い、無言でキスをした。影が一つに重なる。欲情を満たす口付けでは無く、愛を確かめ合うような甘ったるいキスだった。唇を離し、瞳は離さないまま美琴は、 「ねぇ、当麻」 「なんだ?美琴」 「一年前に帰った当麻も、私のこと、好きになるかな?」 「ははっ…欲張りだな。美琴は」 「いいじゃない…それくらい」 一年前の自分が、どうような未来(せかい)を辿るかは分からない。 『戦争』が起こらない世界も『在』る。 近しい友が生存する世界も『在』る。 『戦争』で敗北する世界も『在』る。 自分が死んでしまう世界も『在』る。 御坂美琴を選ばない世界も『在』る。 小さな選択肢で、幾つもの多様な未来へと別れる「並行世界」。 その中で、この上条当麻は、この世界を選びとった。 後悔は無いと言えば嘘になる。 だが、この道を選んだ責任は取る。 そうやって、彼は新たなる未来(せかい)へ進んでいく。 上条当麻は全ての思いを呑みこんで、返事を待ちわびる恋人に笑顔を送った。 「ああ…何度でも、美琴のことを好きになる」 時間は、ゆっくりと流れていく。 再び、二人は甘い口付けを交わした。 夜空をほのかに彩る満月は、一つになった人影を優しく照らしていた。 『並行世界(リアルワールド)』 Epilogue2 7時00分。 上条当麻は強い日差しに目が覚めた。すっかり秋の季節になって少し肌寒い早朝。 「…ん、んーっ」 体を動かし、目をこすりながら起き上ろうとした。薄目で時計を確認する。 (…まだ七時じゃねーか。あと十五分くらいはいいだろー) 昨日のうちにインデックスの朝食のためのご飯の仕込みは終わっている。おかずも昨日の残りがある。冷凍食品の在庫も問題ない。 (むにゃむにゃ、あと十五分は寝かせてくださいましー) ん? 上条当麻は、ふと気がついた。 なにやら美味しそうなにおいが漂っている。コトコトと鍋の音が聞こえてくる。 (俺、タイマーをセットしておいたっけ?) そんなはずは無い。上条当麻は炊飯ジャーのタイマーしかセットしない。そう疑問に思い、布団を跳ね除けて起き上がろうとして――― 「へっ?」 上条はベッドから転げ落ちた。 「い、ぎゃあ!?」 盛大に頭から転げ落ちる上条。不器用な前転によって頭に激痛が走った。 「いってー…って、ベッド?俺…へ?インデックスは?」 自分はいつも風呂場で寝ている。ベッドはインデックスが使っていて… まだ頭が覚醒しない上条当麻は、ドタドタとフローリングの床を走る音の方向を見た。 「とうま、おはようっ!」 瞳をキラキラと輝かせた銀髪碧眼シスター、インデックスが近づく。 部屋中に漂う匂いを嗅いで、上条は 「……朝からカレー?」 「とうまが好きだって言ってたから、私早起きして作ったんだよ!」 「……え?」 と、茫然。 そして、 「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!」 少年の絶叫が、とある男子寮に響き渡った。 上条の声に驚いているインデックスの肩をガシィ!と掴んだ。 (え?カレー?作った?何を言っているんですかこの暴食シスター様は!) 「どういう心境の変化ですかインデックスさん!…はっ!?まさかおねだりですか?わたくし上条当麻はこのとーり、貧乏学生でありますよ!高価なものを買うことは…」 「…なに言ってるの?とーま。私は…その……昨日の…いや、日頃の…お礼として、カレーをつくってみただけだよ?料理するのは初めてだったけど、レシピ通りに一所懸命に作ったんだ。 ……食べる?」 昨日?はて、俺はいったい何をした?と考えを巡らせながら、視線を落としたところで、上条当麻は硬直する。 なせなら、 頬を赤らめて、もじもじとするインデックスが、とても可愛かったからだ。 『並行世界(リアルワールド)』 Epilogue 同時刻。 ここはある高級住宅街にあるアパートの一室。元来は一人の独身女性が住まう一室だったが、今では色々な事情があり、四人で生活している。 カーテンから差し込む陽射しに目が眩んだ。 無造作に布団をはねのけ、白髪の少年は、うっすらと目を開ける。 二つの大きな人影が視界を覆う。 黄泉川瑞穂と芳川桔梗が、神妙な顔つきで白髪の少年を見ていた。 「…………………………………………………………………………………………………ア?」 彼女たちの顔をアップで見た『一方通行(アクセラレータ)』は、 「…何してンだお前ラ」 とりあえず万一に備え、チョーカーのスイッチに手をかける。 ジャージ姿の黄泉川は言葉を選ぶように、 「…アクセラレータ、大丈夫じゃんよ?」 「心配だったのよ?昨日と一昨日の様子が変だったから…」 そう言われて、白髪の少年は四八時間前の記憶を掘り起こす。 裏稼業の仕事はしていない。 特にやる事も無かったので、カエル顔の医者に紹介された技士を訪れ、杖の細工を依頼しただけだ。腑に落ちない点は無い。だが、二人の反応を見るに、何かがあったらしい。 上半身を起こそうとして、左腕に不自然な重みを感じる。 「?」 布団をめくると、アホ毛をピョコンと立てた『打ち止め(ラストオーダー)』の寝顔をあった。 『一方通行(アクセラレータ)』のこめかみにビシィ!と青筋が走る。 「おいコラ……なンでコイツがここで寝てンだよ」 その言葉に、黄泉川の顔がますます険しくなっていく。 「……アクセラレータが一緒に寝ようって言ったじゃんか…私たちの忠告も無視して、ラストオーダーのはしゃぎっぷりは尋常じゃなかったし」 「ンだとォ!?」 驚愕する『一方通行(アクセラレータ)』を真剣な目つきで見ながら、黒スーツ姿の芳川桔梗が、 「…やっぱり覚えてないのね」 と告げた。 彼女の意味深なセリフに『一方通行(アクセラレータ)』は反応する。 有無を言わせない目つきで彼女を睨みつけた。 「…一昨日と昨日の二日間をフルに使って、第六学区の遊園地を回ったのよ…私たちの仕事を裏から手をまわして、休暇にしてまで…ね」 「……遊園地ィ?いつ行ったンだよ?」 『一方通行(アクセラレータ)』は周囲を見回すと、見覚えの無いモノがある。 等身大のクマのぬいぐるみや、いかにも『打ち止め(ラストオーダー)』が好みそうな品物が、部屋の至る所に多く置かれていた。 「…………どういうことだ?」 一種の恐怖を覚えた『一方通行(アクセラレータ)』が、底冷えした声を出すと、 「ぷ」 黄泉川瑞穂が、 「あっははははははははっ!そこまで覚えていたくないほど、恥ずかしかったじゃん!?ぷ、ぷくくくくくっ…アクセラレータ、結構可愛いところあるじゃん」 突然笑い出す。 「…ふふふふ、確かに「アレ」は可愛かったわね。貴方に対する印象が変わったのは、確かね…ぷっ」 彼女につられ、芳川桔梗も笑みをこぼしていた。艶の無いショートヘアの黒髪がゆれる。 心底面白かったのか、普段はクールな彼女にしてはめずらしく腹をかかえていた。 対して、白髪の少年はまったく面白くない。 「…オイ。テメェら。何が可笑しいのか、今すぐ説明しろコラ。十秒以内だ」 その態度が彼女たちの琴線に触れたのか、黄泉川瑞穂の表情はさらに緩んだ。 「あっはっはっはっは!凄んでも何も怖くないじゃん!…は、腹が痛い!ふ、ふひひひひ!桔梗、水ちょうだい!笑いが、ぷははは!と、止まんない!」 テーブルをバシバシと叩く彼女を見て、「朝っぱらから喧嘩を売るとは上等だコラァ!」と『一方通行(アクセラレータ)』はブチ切れる。 彼らのやりとりを余所に、彼の隣で寝ていた『打ち止め(ラストオーダー)』は、 (貴方と一緒にたべたハンバーグ、美味しかったってミサカはミサカは…) むにゃむにゃ…と、幸せそうな笑顔で寝言を口にしていた。 窓のそばに、一つの写真立てがある。 写真の日付は昨日の昼時で、一枚の新しい写真が入っている。 そこには第六学区のアミューズメントパークで取られたものであり、四人の姿が写っていた。全員、何らかの着ぐるみを着ていて、芳川桔梗、黄泉川瑞穂はトラ、打ち止めはヒヨコの格好をしていた。 そして、 写真の中心には、 白髪の少年の不器用な笑顔が、そこにあった。 『並行世界(リアルワールド)』 Epilogue 眩い朝日が学園都市を照らす。 ツンツンとした黒髪に、一六八センチほどの背丈。高校一年の上条当麻は、学校へと続く道のりをトボトボと歩く。 朝からインデックス作のカレーを食べ、初めて作ったとは思えないほどの出来だった。そのおかげか、上条は良い気分に浸っていた。 しかし、腑に落ちない点もある。 (…インデックスの態度が何か妙なんだよなー。やけに優しいし、目を合わせると、顔を真っ赤にするし…それに) 上条は携帯を確認する。 (日付が二日違うんだよなぁ…俺の思い違いかなぁ? やけにリアルな夢を見ていた気もするし…あれー?なのに、夢の内容をまったく覚えてねぇ…) 首をかしげながら、インデックスの態度の原因を考えるが、思い当たる節も無い。ポケットに携帯を入れようとした時、 ヴヴヴヴ…とバイブレーションが作動する。 相手を見た。 画面には『土御門元春』と表示されていた。 上条当麻の背中にいやな汗が流れる。 彼は学校のクラスメイトでありながら、実は魔術側とも繋がりのある多重スパイであり、先週も彼の連絡を発端に、魔術がらみの一悶着があったばかりだ。 インデックスの事が頭をよぎり、戦々恐々たる思いで上条当麻は通話ボタンを押した。 「もしもし、土御門か?」 『カミやん…今日は学校に来ない方がいいぜい』 「何でだよ?また魔術関連の事件が…」 『青ピが上やん討伐作戦を実行中だにゃー』 「……は?」 予想外の返答に、上条は肩透かしを食らった。 しかし、聞き流せない言葉もある。 「なんの不幸イベントだよそれ。青ピを怒らせる事…何かしたか?俺」 電話の向こうで、土御門が言葉を詰まらせたのが分かった。 『…何をしたか?だと?』 「…え?」 『カミやん。今の一言で、俺も青髪の計画に参加させてもらうにゃー』 「おいっ!土みか…」 唐突に電話を切られた。ツーツー…と音が鳴る。 今回は魔術がらみの事件では無いが、何らかのヤバい事に巻き込まれるのは理解した。 冗談ではない。 土御門の声色に明らかな殺意が混じっていた。 「…どうすっかな?学校行った方がいいのかな?」 時間に余裕を持って登校している途中、 目の先に見慣れた少女が樹木の裏側に立っていることに気付いた。 肩の高さまである茶髪に、上条よりも七センチほど低い背丈。ベージュ色のブレザーに紺色のプリーツスカートを穿いている。 (あれは…ビリビリだよなー …今学校に行ったらヤバい気がするし…適当に御坂をあしらって、時間潰すか) と、上条は生まれて初めて彼女の出会いに感謝した。 相手は俯いていて、上条には気づいていない。今日は自分から声をかけようと思い、手を振った。 「おーい。御坂ー」 ビクン!と反応し、全身がプルプルと震えだした。変なのいつも通りか、と上条は思って、彼女が振り向いた直後、 ズドドンゥ!! 一〇億ボルトの電撃が、少年の真横を突きぬけた。 即座に反応できず、腰を抜かした上条は右手を突きだしながら叫ぶ。 「み、みみみみ御坂さん!朝から致死レベルの電撃を浴びせるとは、一体何事ですかっ!」 周囲にいた学生たちが悲鳴を上げながら、散らばっていく。 前髪をバチバチと鳴らせながら、 「昨日、自分が何をしたか…覚えてる?」 常盤台中学二年、学園都市『超能力者(レベル5)』の第三位、御坂美琴は上条当麻に近づいた。 聞くまでも無い。 少年が煽るまでもなく、彼女は戦る気満々だった。 「そ、そそそそそその上条さんは、常盤台のお嬢様の気に触れる事を何かなさったのでしょうか?」 怯えた声を上げながら、上条は御坂美琴の表情を見る。 はて? 気のせいだろうか? 美琴の顔が真っ赤になっている。 「…まさか、覚えてないの?」 声が怖い。 「は、はははははははいぃぃ…インデックスに噛みつかれたせいか、昨日と一昨日の記憶が丸っきり無いのでして…」 「じゃあ、思い出せやコラ♪」 ビリビリバチィ!! と、上条の顔面目掛けて雷撃の槍が放たれた。 反射的に右手で打ち消す。 それだけでは気が済まないようで、少女の全身から不穏な雷鳴が聞こえてきた。 「それなら…私が…思い出させてやるわ… アンタはね…常盤台中学の、正門の前で……私を呼びとめて、私に……き……き、キキキキキ…」 「き?」 上条当麻の間抜けな反応に、御坂美琴はついにブチキレた。 「KILL YOU!(殺す!)」 ズドン! 音速の三倍以上のスピードで撃ち出された『超電磁砲(レールガン)』が、上条当麻の髪をかすめた。 「レールガン!?お前!本気で殺す気だな!?」 ジジジ…何かが焼け焦げた匂いがする。 本能的にヤバいと上条は感じ、学校のカバンを投げ出して逃走した。 「待てやコラァ!」 一〇億ボルトの雷撃が足元に直撃し、アスファルトの地面が抉れる。 「御坂さーんっ!!口調がどこぞの不良ッぽくなってますよー!?」 御坂美琴は次々に雷撃を繰り出し、上条当麻を追いかけ始めた。 「アンタが、あんな事を…したせいでっ!先生に、問い詰められるわっ!黒子は、鳴き喚くわっ!大変、だったん…だからねっ! アンタのせいで、全然眠れなかったんだからっ!責任取れええええええええー!」 自分の立場を忘れ、大声を張り上げながら少女は走りだす。 彼らにとってはいつもの光景であり、 理不尽な攻撃を受けて、少年はいつもの口癖を叫ぶ。 「不幸だー!」 少年の声は、快晴の空に響いた。 こうして、 上条当麻の不幸は、続いていく。 fin
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/こぼれ話 超電目録こぼれ話 絶対能力進化実験 中編 上条 「じゃあボチボチ中編始めるか」 美琴 「そうね。大分休憩したし」 上条 「けどその前に、中編のゲスト紹介だな」 美琴 「え…? するの? いらないんじゃない?」 上条 「いや…そういう訳にはいかんだろ。もう予告しちゃったし」 美琴 「私アイツ嫌いなのよね。しかも今回の事件の主犯じゃん」 上条 「そうだけど、今じゃ主役の一人だから人気もあるし……あっ! それにほら! アイツって『このライトノベルがすごい』の『男性キャラ部門』で、3年連続4位以内だぞ!?」 美琴 「……アンタなんか、6年連続3位以内じゃない」 上条 「あー……キリトに2年連続1位でとられたんだよなぁ…さすが既婚者(ゲームの中で)は違うわ……」 美琴 「ちなみに私は『女性キャラ部門』、4年連続1位だけどね!」 上条 「…うん、お前すごーいね」 美琴 「そ、そう?///」 一方 「……そろそろ紹介してくンねェかなァ」 上条 「あっ! ゴメン!」 一方 「つー事で、中編ゲストの一方通行だァ。ヨロシクなァ、三下にオリジナル。それとスレの住人共よォ」 美琴 「ったく、何でアンタが来るのよ」 一方 「リクがあったンだから仕方ねェだろ!」 上条 「で、今回はどうなの? 前編みたいに、俺と美琴の絡みがないとこもピックアップすんの?」 美琴 「あるにはあるけど…でもあくまで私とアンタの話が出てるとこだけ。 前回のはアンタの出番が極端に少ないから、苦肉の策でああなっただけだし」 上条 「あ、そうなのか? せっかく一方通行が来てるから、一方通行が出てるとことかもやるのかと」 美琴 「それ、あんま興味ないなー」 一方 「興味なくて悪かったなァ! だが俺ンとこをやンねェのは自分でも賛成だ」 上条 「何でだよ」 一方 「じゃァ聞くがよォ、俺がクローンの指食ってる描写とか、テメェは話広げられンのかァ?」 上条 「いや、それはちょっと……」 美琴 「無理よね……」 一方 「だろ? ぶっちゃけそこをツッコまれると俺も困る」 上条 「じゃ、じゃあ一方通行単体の描写はナシって事で」 一方 「まァ、テメェ等のどっちかが絡ンでればアリだとは思うがよォ」 美琴 「って訳で、前置きはこの辺でいいんじゃない?」 上条 「そうだな。じゃ、次レスから本編スタートです」 「ちょろっとー。自販機の前でボケっと突っ立ってんじゃないわよ」 上条 「あー懐かしいなここ。美琴と初めて会ったシーンだ」 一方 「あン? オリジナルとはもっと前に接触してたンじゃねェのか?」 上条 「あそっか、一方通行は知らなかったっけ。俺、一回記憶喪失になってんだよ」 一方 「えっ!!? マジか!?」 上条 「うん、マジ」 美琴 「あ、でも記憶喪失後も一回会ってるわよ」 上条 「うそ! どこで!?」 美琴 「ヒントは、アニメ版の超電磁砲」 上条 「えっ!? う~ん……」 美琴 「……ヒントその2。盛夏祭」 上条 「えーっとぉ……」 美琴 「ヒントその3! ヴァイオリン!」 上条 「んー…あー………」 美琴 「どんだけ思い出せないのよ!!!」 一方 「今も記憶喪失続行中なんじゃねェのか?」 「御坂美琴って名前があんのよ! いい加減に覚えろド馬鹿!!」 一方 「覚えろっつっても知らねェンじゃなァ」 上条 「ですよねー」 美琴 「こ、この時はアンタが記憶喪失だったなんて知らなかったんだもん!」 上条 「そういや第一回のこぼれ話でも言ってたけど、そんなに名前で呼んでほしいのか?」 美琴 「えっ!? そそそ、それは…その……まぁ…………うん///」 上条 「……み~こと」 美琴 「はにゃっ!///」 上条 「みこ~とちゃん」 美琴 「へにょっ!!///」 一方 「……何してンの」 ムスっとしている中学生(改め殺人未遂犯)を眺める。 上条 「……………」 美琴 「だ、だだだから! この時は記憶の事知らなかったんだってば!! 何度も言ってるでしょ!? どうせいつもみたいに効かないと思ってたから私も安心して雷撃をね!!」 一方 「よォ、殺人未遂犯」 美琴 「うっさい! アンタは未遂じゃないでしょうが!!」 (ちくしょー俺の周りこんな知り合いばっかかよーっ!) 上条 「ハハッ…この時はまだまだ序の口ですよ。これからもっと珍獣達と仲良くする事になる訳で……」 美琴 「…類は友を呼ぶって諺知ってる? アンタはその珍獣達の中心なんだけど」 上条 「いやいやいや! 俺はまともだよ!!」 美琴 「天然な人は自分じゃ気付かないっていうのは本当みたいね」 上条 「俺! 一般人代表! 普通で普通の高校生!」 美琴 「どこの世界にアンタみたいな一般人がいるってのよ!」 一方 「おい、その珍獣とやらに俺も入ってンじゃねェだろォな。言っとくが俺はそンな変な連中とは違―――」 上条&美琴 「「あんたはー だーっとれぃ!」」 「その自販機な、どうもお金を呑み込むっぽいぞ」 上条 「コイツ、まだ直ってないのかな」 美琴 「みたいね。ったく、自販機もまともに直せないなんて、科学技術の最先端が聞いて呆れるわ」 一方 「つーかこの自販機需要あンのか? 売りもンのラインナップに悪意しか感じねェンだが」 美琴 「意外と評判みたいよ? 怖いもの見たさってヤツで」 上条 「マズイと分かってる物をわざわざお金を出して買う…… しかもお札が呑み込まれるかもしれないギャンブル付き……それってどうなの?」 美琴 「うっ… 改めて言われると……どうなのかしら」 一方 「ハイリスク、ノーリターンだな」 ちぇいさーっ! 上条 「出たか…超電磁砲と並ぶ美琴の代名詞」 一方 「昭和のテレビじゃねェンだからよォ…」 美琴 「結構便利なのよ、これ。自販機以外にも応用できるし」 上条 「例えば?」 美琴 「黒子が抱きついてきた時とか」 一方 「ただの護身術【ぶつりこうげき】じゃねェか」 スカートの下は体操服の短パンだった。何か夢を壊された気分。 美琴 「なな、何考えてんのよこのスケベ!!///」 上条 「バカヤロウ! これは俺個人の意見じゃなくて、男性読者全ての意見だ!」 美琴 「そ、そんなに見たいモンなの…?」 上条 「まぁ、見れたらラッキーって感じかな。正直なところ」 一方 「特に思春期真っ盛りの中二男子とかはたまンねェだろォよ。俺は興味ねェがな」 美琴 「…男って……」 「……、ひょっとして、呑まれた?」 一方 「…すげェイキイキした顔してンな」 美琴 「だ、だって私と同じ体験した【のまれた】人初めて見たんだもん! ちょっとテンション上がっちゃって……」 上条 「それだけじゃねーだろ! 絶対、俺をおちょくってやろうと思ってねあの目は!!」 美琴 「それもまぁ……無きにしも非ず…かな~?」 居候の白いシスターに花火でも買ってやっかなー、と思って財布に入れていたモノだが、 美琴 「……ふ~ん、あの子にはそんなに優しいんだ。へ~、ほ~……バチバチッ」 上条 「あ、あれあれ? 何故か美琴センセーのご機嫌が斜めになってますぞ?」 一方 「あーそォいう時はアレだ。抱き締めて頭撫でりゃ大人しくなる」 上条 「……逆効果じゃないのか? それ」 一方 「いや、俺も黄泉川に言われてあのガキにやってみたンだがよォ、すげェ効果だったわ。 多分同じDNAのオリジナルにも効くンじゃねェか? 原理は全く分かンねェがな」 上条 「そ、そうか。えっとまずは抱き締めて……」 美琴 「ふぇっ!!?///」 上条 「で、次は頭を撫でる…と」 美琴 「はにゃっ! はにょ~~~~………///」 上条 「ホ、ホントだ! 何でか知らないけど大人しくなった!!」 一方 「な? 何でか知らねェけど大人しくなっただろ」 美琴が自販機に蹴りを入れまくってたからこんな事態になった、という所まで上条の思考は追い着かない。 上条 「あ、そっか。全部美琴のせいじゃん」 美琴 「…わりゅ、わりゅきゃったわにぇ……///」 上条 「何て!? えっ、なに、どしたん!?」 一方 「さっきの技がまだ効いてンだろ。打ち止めン時もそォだったが、結構後引くンだわ」 「今時二千円札なんてコンビニのレジん中にも入ってないってば、あっはっはっはっは、ひーっ!」 美琴 「今思い出しても…ぷっ! 二千円て…くくっ!」 一方 「あァ、戻ってきたか」 上条 「…そんなに笑う事でせうか?」 美琴 「だって二千円…二千円て………あっはっはっはっは、ひーっ!」 上条 「笑いのツボが分かんねぇよ!」 「あ、なんかいっぱいジュース出てきた」 上条 「…改めて思うんだけど……これって絶対マズイ事してるよな…?」 美琴 「お札を呑み込む自販機が悪いのよ。私は悪くないもん」 上条 「いやいやいや! 『ないもん』とか可愛く言っても駄目でしょ! 警備員とかに見られてたら、確実にお縄ですよ!?」 美琴 「え…? か、可愛く…?///」 上条 「関係ないとこ食い付いちゃったよ!」 一方 「おい、ウィンナーソーセージ珈琲ってのは無糖なのか?」 上条 「お前も変なとこに食い付くなよ! 無糖じゃねーよ!」 「春上さん 病院に寄ってから合流するそうです」 上条 「っと、これは超電磁砲の話だな」 美琴 「うん、初春さんと佐天さん」 上条 「春上って娘は?」 美琴 「アニメオリジナルの乱雑開放編で出てきた娘で、今は柵川中に通ってるわ」 一方 「乱雑開放っつーと…置き去り事件の被害者かァ?」 美琴 「知ってるの?」 一方 「資料で読ンだだけだがなァ。それに俺が調べてたのはテレスティーナの方だ」 美琴 「ああ…あの女もレベル6を創ろうとしてたもんね」 一方 「チッ…木原の血族にはろくな奴がいねェな」 美琴 「そうでもないわよ。那由他ちゃんとかいい子だったし」 上条 「………全っ然知らない話すぎて、全く会話に入れない」 「それってズバリ 男 じゃないですか?」 美琴 「さささ佐天さん!!! な、なな、何変な事言ってるの!!!///」 上条 「……いや、間違ってはいないんじゃないか?」 美琴 「なっ!!!?///」 上条 「一方通行【じっけん】の事で悩んでたんだろ? 一応、『男』の悩みであってると思うんだが……」 美琴 「あぁ……うん…そうね………」 一方 「ニブすぎンだろ」 ?? 「あなたが言う!?ってミサカはミサカは―――」 「恋煩いってヤツよ」 美琴 「さささ佐天さん!!! だだ、だ、だから何変な事言ってるの!!!///」 上条 「そういや美琴の浮いた話って聞かないな。 海原はタイプじゃないって言ってたけど…どんなのがいいの?」 美琴 「……………」 上条 「え? なになに、どうしたのでせう?」 一方 「だからニブすぎンだろって」 ?? 「だからそれはあなたも!!ってミサカはミサカは―――」 「きっと王子様みたいな素敵な方なんでしょうねー」 一方 「まァ…オウジサマって面じゃねェわな」 上条 「えっ!? 一方通行って美琴の好きな相手知ってんのか!?」 一方 「察しはつく」 美琴 「えええええぇぇぇぇ!!!?///」 一方 「どっちかっつーと、オウジサマより『ヒーロー』って感じの野郎だ」 上条 「……ヒーローて…どっちみち何か恥ずかしいな、ソイツ」 美琴&一方 「「……………」」 「ひとりの女の子として見てくれる人に惹かれるタイプだと思うなー」 美琴 (佐天さん…相変わらず変な所で鋭い……///) 上条 「これってどういう意味だ?」 一方 「レベル5っつー色眼鏡で見ねェ相手って事だろ。心当たりあるンじゃねェのか?」 美琴 「ちょ、ちょちょ!!///」 上条 「……それって…もしかして…?」 美琴 「ちょーーー!!!///」 上条 「…相手は同じレベル5とか…? ハッ!! まさか一方通行!?」 美琴 「んな訳ないでしょーがああああ!!! 『ハッ!!』じゃないわよ!!!」 一方 「…俺からも願い下げだァ」 「でも毎晩朝まで帰ってこないという事は…… ひょっとして御坂さんっ ぬふぇぇぇ~~~」 美琴 「~~~~~!!!!!///」 上条 「…この娘は、一体何を想像したのでせうか…?」 一方 「決まってンだろ。セッ」 上条 「言わせねぇよ!?」 美琴 「ふにゃー」 きっと一〇分ぐらいは全力疾走したと上条は断言する。 上条 「…何か俺、しょっちゅう走り回ってる気がすんだけど気のせい?」 一方 「そンだけ事件に巻き込まれてるっつー事だろォ」 美琴 「じ、事件て! 私に追いかけらてるだけでしょ!?」 一方 「器物破損に窃盗。充分事件じゃねェか」 美琴 「うぐっ…」 上条 「まぁ、それくらい学園都市じゃ日常茶飯事だしな……」 「元々アンタの取り分でしょ?」 上条 「俺は現物【ジュース】よりも現金【2000えん】が欲しかった…」 美琴 「出てきちゃったんだから仕方ないじゃない!」 一方 「これほど無駄な出費もねェな」 美琴 「な、何よ! 二千円くらい大した事ないじゃない!」 上条 「出たよお嬢様発言! たった今美琴さんは、世の貧乏学生全員を敵に回しましたよ! 二千円もあればなあ! インデックスの一回分の食費の50…いや30%ぐらいにはなるんだぞ!」 美琴 「どんだけ食べてんのよあの子は!!」 上条 「お金ってのはそれだけ大事って事ですよ。一方通行もそう思うだろ?」 一方 「…8兆円の借金があるが何か?」 上条 「………何でもないっス」 「このジュースを受け取った瞬間に傍観者から共犯者へ成長進化しそうで怖い上条さんですが」 一方 「……おめでとォ! ぼうかンしゃはきょうはんしゃにしンかした!」 上条 「何一つめでたくねーよ!」 一方 「……………」 上条 「あれ…? 急にどした?」 美琴 「…珍しく自分からボケたせいで、どんな顔すればいいのか分からなくなったみたいね」 上条 「…キャラにない事するから……」 「『ガラナ青汁』と『いちごおでん』の二大地獄がやってこなかっただけでも」 上条 「商品の実地テストってのは分かるんだけど…売り上げはどうでもいいのか?」 美琴 「さっきも言ったけど、意外と売れてるのよね。 ……まぁ、さすがにこの二つだけはリピーターはいないみたいだけど」 一方 「青汁の方は黄泉川の野郎がたまに飲ンでンぞ」 美琴 「マジで!?」 一方 「あァ、警備員は健康第一とか言ってな。味については何も言わねェがよ」 美琴 「はぁ~…よく飲めるわね」 一方 「…だな。正気の沙汰じゃねェ」 上条 「俺も一度だけ飲んだ事あるけど、体が受け付けなかった」 ?? 「でも健康にはいいじゃん!」 「ホントは強いくせに自分は弱いと思い込んでバカを見るって感じ?」 上条 「いやいやいや、上条さんなんてただの一介の無能力者に過ぎませんから」 美琴&一方 「「……………」」 上条 「だいたいアレだぜ? スキルアウト3人に囲まれただけでもうヤバイし、 相手が銃の一丁でも持ってたら即アウトだよ」 美琴&一方 「……………」」 上条 「そんなチワワみたいに人畜無害な俺に向かって強いとか…… ってあれ? どうしてさっきから黙っているのでせう?」 美琴&一方 「「……………」」 「勝者としての責任ぐらいは取ってもらわないと困るのねん」 上条 「責任って…例えば?」 美琴 「えっ!!? た、例えばアレよ……そ…その……そういう…アレとか………///」 上条 「なるほど、分からん」 美琴 「だ、だから! ああいうコレ…とか……こういう…ソレ……とか………///」 上条 「いやだから! アレとかソレとか、要求が抽象的すぎだろ! 具体的には何をどうして欲しい訳!?」 美琴 「そそそそんなの言えないわよ馬鹿!!!///」 上条 「言えないような事させようとしてんの!? えっ、なに、もしかして犯罪絡み!?」 一方 「漫才続けンなら、次行っていいか?」 「常盤台中学の真性お嬢様の上へ馬乗りになってグーを握ってゴメンなさいもうしませんと―――」 上条 「いやー…こん時は本当に焦った」 美琴 「アンタこんな想像してたんだ……」 上条 「いやだって、『アンタはこの私に勝利した』とか急に言われたら何かよからぬ事考えちまうって!」 一方 「で? 実際はどォだったンだ?」 上条 「する訳ないでしょうが! いや…記憶なくす前だから断言はできないけども!」 一方 「断言できねェンだったら犯っちまったかもしれねェだろ」 上条 「ないよ!! もしそんな事してたら最低最悪の主人公として歴史に名を刻んでるわ!! 今頃は『誠死ね』みたいに『上条死ね』とか言われてるわ!!!」 「自分からは決して殴らず、相手に散々殴らせておいて全弾完璧にガードする」 上条 「ほら見ろー!!」 一方 「チッ…! つまンねェな。犯ってねェのかよ、レイ」 上条 「言わせねぇよ!!?」 美琴 「そそそそれってつまり私とアンタが!!!/// ふにゃー」 上条 「そして何でそこで『ふにゃー』するのかな!!?」 「美琴センセー直々のプレゼントなんてウチの後輩だったら卒倒してるのよん」 一方 「プレゼントもクソも三下の金で買ったヤツじゃねェか」 上条 「まぁ正確には『買った』とも少し違うけどな……」 美琴 「ええい、うっさいうっさい」 一方 「あっ…プレゼントで思い出したンだがよォ。テメェ、ハワイで買ったリングはどォしたンだァ?」 美琴 「なっ!!!?///」 一方 「ありゃァまだ渡してねェのか?」 美琴 「なななな何でアンタがその事知ってんのよ!!!///」 一方 「番外個体から聞いた」 上条 「なになに? 何の話?」 美琴 「な、なな、何でもないわよ!!!///」 「色々あるんですよー、いろいろ。むしろどろどろ?」 上条 「……ひょっとして白井みたいのって他にも…?」 美琴 「はは…まぁね…なんてったって女子高だから……何かもう、ささめき青い花をマリア様がみてるって感じ?」 上条 「うへあ……」 一方 「……ゆ・り・ゆ・ら・ら・ら・ら・ゆるゆり♪」 上条 「…何で急に歌った?」 一方 「……………」 美琴 「あっ、また落ち込んだ」 上条 「だからキャラにないボケすんなって! 意外と豆腐メンタルなんだから!」 「お姉様?」 上条 「白井初登場か」 美琴 「禁書本編ではね」 上条 「そういや白井って、何でいつも俺を目の仇にしてんだ? 俺何かしたっけか?」 美琴 「さ、さささぁ!? な、何でなんでしょうね!?///」 「このための口実だったんですのね!」 「『このため』とは『どのため』を言っているのかしら?」 「決まっています。そこの殿方と密会するためでしょう?」 上条 「そうなのか?」 美琴 「ち、ちちち違うわよ!? ぐ、偶然! この時は本当に偶然だったんだから!!///」 上条 「…だよな」 一方 (『この時は本当に』ってのが全てを物語ってンな……) (パッとしない方ですわねぇ 本当にこんなのがお姉様と……) 上条 (ひでぇ言われようだな……) 美琴 (く、黒子のヤツ……コイツはそんなんじゃないって言っておいたのに……///) 一方 (パッとしねェよォな野郎に、俺は二回も負けたンか……) 「この程度でドギマギしているようでは浮気性の危険がありましてよ?」 美琴 「……何赤くなってんのよ、アンタは」 上条 「い、いやほら、女の子と手を握るなんて素敵なイベント滅多にないし……」 美琴 「ふ~ん……」 上条 「(ああ、ヤバイ! 美琴センセーがまた不機嫌モードになりそう……話を逸らそう。うん、そうしよう) し、白井も白井だよな。俺が浮気性かどうかなんて、美琴には関係ないのにな?」 美琴 「ええ! そ・う・ね!!!」 上条 「あれっ!? 何故か逆効果!!」 一方 「テメェ馬鹿だろ」 「ア・ン・タ・はぁーッ このヘンテコが私の彼氏に見えんのかぁっ!」 美琴 「ホ、ホホ、ホント黒子には困っちゃうわよねー!!?///」 上条 「ああここか…これ結構ショックだった記憶が……」 美琴 「えっ!? そそそれって!!?///」 一方 「……そりゃ彼氏じゃねェって言われた事にか? それとも『ヘンテコ』って言われた事にか?」 上条 「それはまぁ…『ヘンテコ』の方だけど」 美琴 「……うん、そうよね…期待なんかしてないわよ……最初からね……」 上条 「…でも今思えば、彼氏を否定された事もショックかなぁ……」 美琴 「!!!?」 上条 「だってそれって、周りから彼氏として見て欲しくないって事だろ? つまり俺を男として見てくれてないって意味で、上条さんに興味がないって意味で…はぁ、不幸だ……」 美琴 「ちちち違うの! そういうのじゃなくて―――」 上条 「いえいえ、遠慮など無用ですよ。俺なんかじゃ嫌ですもんね。不幸です」 美琴 「ちーがーうーのーーー!!!」 一方 「…何で敬語になってンだよ」 (ついでにそのヘタレぶりを見て男性全般に対して幻滅してくださればお姉様をわたくしが慰めてグヘヘヘ……) 上条 「…ヘタレって……」 一方 「いや、そこよりツッコむべき所があるンじゃねェか?」 上条 「白井の事だろ? まぁ、いつも通りっちゃいつも通りだからな」 美琴 「そうね、これが黒子にとっての『普通』だから。むしろこれくらいなら大人しい方よ」 上条 「じゃあ、一番ヒドイ時は何されたんだ?」 美琴 「……スポーツドリンクに謎の薬を盛って、私に飲ませようとしたとかかな」 上条 「うわぁ…」 一方 (オリジナルはオリジナルで大変なンだな……) ベンチの後ろに、もう一人御坂美琴が立っていた。 上条 「確認するけど…この娘は10031号なんだよな?」 美琴 「そうね……あの実験の最後の被害者になった娘よ………」 上条 「……………」 美琴 「……………」 一方 「……言いてェ事があンなら言えよ」 「……って、え? 増えてる!? 御坂二号!」 一方 「二号って言い方もどォなンだ? 何か愛人みてェだけどよォ」 上条 「愛人って……なぁ、美琴?」 美琴 「そ、そそ、それってつまり、わわ、私が本妻って事!!?/// つつつつまり私とアンタがけ、けけ………ふにゃー」 上条 「もう、お前の『ふにゃー』スイッチが分かんねぇよ!!!」 おかしな口調だなぁと上条は思ったが口には出さない事にした。 上条 「思えばこの世界、変な口調の奴って多いよな」 美琴 「まぁ、妹達【このこたち】並みにクセがあるのは少ないけどね。 でも口調に特徴があるおかげで、わざわざ説明しなくても誰がしゃべってるか分かりやすいから、 別にいいんじゃない? これも禁書の醍醐味よ」 一方 「まァ、個性的でいいンじゃねェか? 俺みてェに一般的なしゃべり方の側からすりゃァ、若干羨ましィぐれェだァ。 方言だと思やァいいンだよ」 上条&美琴 「「……………」」 「御坂ミサカじゃねーんだからさ、そこは普通名前の方を使うモンなんじゃねーのか」 上条 「妹達って未だに個別の名前ないのか?」 美琴 「うーん…そうみたいね。基本的に番号で呼び合ってるみたい」 上条 「それぞれ個性も出てきたし、名前つけりゃいいのに」 美琴 「…でもあの子達、ネーミングセンスが独特だから……」 上条 「ああ…そういや猫の名前に 『いぬ』とか『シュレディンガー』とか『徳川家康』とかつけようとしてたな……」 一方 「だがよォ、そいつ等はテメェのクローンだろ? オリジナルのネーミングセンスに影響されたンじゃねェのか? 少なくとも私服のセンスは少女趣味【そうとうなモン】だって聞いたぞ」 美琴 「しっ! 失礼ね!! 私は普通よ!! てかアンタに服のセンスをどうこう言われたくないわよ!! いつも変なTシャツ着てるくせに!」 一方 「ンだとォ!!? コレめちゃくちゃカッコいいだろォがァァァ!!!」 上条 (どんぐりの背比べ……だけど口には出さないでおこう。俺まだ死にたくないし) 「―――――アンタ! 一体どうしてこんな所でブラブラしてんのよ!!」 上条 「こん時の美琴は迫力があってビビッたな」 美琴 「私自身もものすごくビックリしたからね」 「研修中です、とミサカは簡潔に答えます」 「けん、」 美琴 「……この時はもう、頭が真っ白になったわ」 上条 「……だよな。あんだけやって、やっと実験を止められたと思ったんだもんな……」 美琴 「……………」 上条 「……………」 一方 「……だから、言いてェ事があンなら言えって」 「風紀委員? あーあーそれよそれ」 上条 「意外と合ってるかもな。御坂妹の風紀委員」 美琴 「確かに、『風紀委員です、とミサカは腕章を見せびらかします』とか言いそう。 ま、あの子達の存在がおおっぴらになるとマズイから、実際は無理でしょうけど」 上条 「美琴は? 風紀委員とか、正義のヒーローみたいなの好きそうだけど」 一方 (…ヒーロー?)ピクッ 美琴 「んー…黒子から誘われた事はあるんだけど……柄じゃないかなって。自由な時間もなくなりそうだしね。 まぁ確かに、悪と戦うってのはちょっと憧れあるけど」 一方 (…悪と戦う?)ピクピクッ 上条 「そっかぁ…美琴ならいい風紀委員になれると思うんだけどな」 美琴 「な、何で…?」 上条 「いや、風紀委員って強くて優しい人がやるってイメージがあるからさ、美琴ならピッタリかなって」 美琴 「えっ…えええ!!?///」 上条 「…まぁ、白井はそのイメージからかけ離れてるけど……」 一方 「…仕方ねェ。オリジナルがやンねェンなら俺が―――」 上条 「お前には無理だ! 色んな意味で!」 美琴 (褒められちゃった……///) 「複雑な……、」 「……。ご家庭、なのかなぁ?」 上条 「想像以上に複雑だったな」 美琴 「家庭とはちょっと違うけどね」 上条 「美琴って実際は一人っ子?」 美琴 「うん。アンタん家もそうでしょ?」 上条 「らしいな。従妹はいるみたいだけど、兄弟はいない。だからちょっと羨ましいよ。妹達がいる美琴がさ」 美琴 「……一万人弱もいるのに?」 上条 「いないよりはいいと思うぞ?」 美琴 「そう…かな」 上条 「だから俺さ、将来結婚したら子供たくさん欲しいな~とか思っちゃったりして」 美琴 「!!!///」 上条 「美琴はどう?」 美琴 「い、いいい、い、いいんじゃないかしら?///」 一方 「俺がいるって事を忘れてねェか?」 美琴 「っと、今回はここまでみたいね」 上条 「えっ!? もう!? まだ3巻の序盤だぞ! 40ページだぞ!?」 美琴 「3巻は私とアンタの絡みが多いから仕方ないのよ」 上条 「まぁ…この巻は美琴と御坂妹がヒロインだからな…出番も多けりゃ絡みも多いか。 一方通行は? 次もゲストやんの?」 一方 「そりゃリクしだいだなァ。またクローンで見たいって意見がありゃァそっちになるし、 俺でいいならそのままだ。もっともそれ以外もありえるがなァ」 上条 「全てはリクにかかってるって事か……次はラストまでやるみたいだな。あくまで予定としては」 美琴 「ほ、本番は次って事よね!」 上条 「本番? ああ、クライマックスって事か?」 一方 「じゃなくて、オリジナルが言いてェのは病院のシーンだろ」 上条 「へっ? 何で?」 一方 「あン? そりゃァそこが一番イチャイチャでき」 美琴 「わー!! わー!! わー!!/// じゃ、じゃあ今回はこの辺で! 次回も見てくださいねー!」 上条 「え、何? 今、一方通行何て言おうとしたの?」 美琴 「気にすんな!!!///」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/こぼれ話
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[黄泉路の番人]デスマスク タイプ テクニック 必要コスモ 15 初期攻撃力/防御力 4300/4720 初期総パラメータ 9020 最大攻撃力/防御力 10750/11800 最大総パラメータ 22550 必殺技 積尸気冥界波 効果 スピードタイプの攻 特大ダウン 【解説】 自身の正義の信念に従う蟹座の黄金聖闘士。悪を討つためなら女子供を犠牲にすることも厭わず、 守護を任される巨蟹宮には、自ら手にかけた者たちの霊が彷徨い続けている。 [黄泉路の番人]デスマスク+ タイプ テクニック 必要コスモ 15 初期攻撃力/防御力 5160/5664 初期総パラメータ 10824 最大攻撃力/防御力 12900/14160 最大総パラメータ 27060 必殺技 積尸気冥界波 効果 スピードタイプの攻 特大ダウン MAX覚醒時 初期攻撃力/防御力 7310/8024 初期総パラメータ 15334 最大攻撃力/防御力 15050/16520 最大総パラメータ 31570 【解説】 自身の正義の信念に従う蟹座の黄金聖闘士。積尸気を自在に操ることが出来、 生きたまま魂に直接干渉する「積尸気冥界波」はどんな相手も問答無用であの世へと叩き込む。
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imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 作者:佐山英治 作品概要 後でここに記載 ジャンル 作品を読む
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【BEASTBIND TRINITYオンライン用キャラクターシート】 【基本情報】 キャラ名 :黄泉平坂 暦(よもつひらさか こよみ) プレイヤー名:いぬはやて 年齢:外見40~50歳、実年齢不明 /性別:男 /カヴァー:闇医者 スタイルクラス:サポーター プライマリ:イレギュラー(異能者)/セカンダリ:ヴォイド(死神) 初期人間性:56 種族:人間、概念、邪神(混血児) 【ライフパス】 出自:興味/人間の世界(好奇心) 邂逅:興味/神庭未羽 エゴ:「研究」の成就 変異:黒き影を纏う。 【能力値】 【肉 体】 【技 術】 【感 情】 【加 護】 【社 会】 基本能力値 【 4 】 【 4 】 【 8 】 【 8 】 【 3 】 能力判定値 【 2 】 【 2 】 【 4 】 【 4 】 【 1 】 アーマー値 【 5 】 【 5 】 【 7 】 【 7 】 【 4 】 戦闘能力値 【白兵値】 【射撃値】 【回避値】 【行動値】 元値 【 7 】 【 7 】 【 4 】 【 11 】 修正値 【 7 】 【 7 】 【 4 】 【 11 】 最大FP値:36 【アーツ】 アーツ名 種別 レベル タイミング 判定値 対象 射程 コスト 効果・解説 ページ 魔獣化 自 1 マイナー 自動成功 自身 なし 0 魔獣の姿となり、データが変更される 170 アレナ展開 自 1 メジャー 自動成功 場面 シーン 0 アンノウンマンをエキストラ化 170 サポートフォーム 自、魔 1 常時 自動成功 自身 なし 0 ≪魔獣化≫をイニシアチブにも使用可能 108 絆の救済者 自、回 1 効果参照 自動成功 単体 シーン 愛 真の死を回避し【FP】完全回復。シナリオ1回 108 ワンモアチャンス 自 1 判定直後 自動成功 単体 シーン 2 判定振り直し。ラウンド1回 108 ヴォイドオーラ 選、魔 1 マイナー 自動成功 自身 なし 4 自分の攻撃を無属性に、対象のA値を0に DCD52 異能:ゴッドハンド 選、回 1 マイナー 自動成功 単体 シーン 4 対象を[【感情】+1D6]回復、バッドステータス回復 DOM55 チャンスメイク なし 1 メジャー 自動成功 単体 シーン 3 対象を未行動にする 109 死を想え 攻、魔 1 メジャー 【感情】 範囲 至近 3 対象に重圧と放心、ドッジは【感情】 DCD55 死の宣告 なし 1 セットアップ 自動成功 単体 シーン 2 対象が受けるダメージに+【加護B】 DCD54 スーパードクター 魔 1 常時 自動成功 自身 なし 2 【回復】のアーツまたはアイテムの効果に+(LV+1)D6 DOM44 混血児:驚異の外科手術 魔、回 1 メジャー 自動成功 単体 至近 4 [【肉体】+(LV×2)D6]回復、バッドステータス回復 DOM50 【装備品】 名称 : 種別 :判定値 : 攻撃力 :ドッジ :G値 :A値 :行動値 :射程 :備考 メス、ハサミ、鉗子 : : : : : : : : :白兵武器(小型)、基本P174 よれよれの白衣 : : : : : : : : :呪衣、基本P176 【一般アイテム】 名称 :効果 診療所 :住宅/住処、DCD119 手技 :闇医者、DCD119 超再生薬 :DCD119 超治癒薬 :DCD119 通信機器 :P181 助手兼ナース :部下/使用人P181 情報屋 :情報コネクションP181 【設定】 中肉・中背。痩せぎすで色白。 老人のような白髪を持つ、金属眼鏡の男。 池袋の裏路地、退廃的なビルが立ち並ぶ区画よりもさらに影に、さらに暗闇に立ち入った場所に、 彼の診療所『こよみ医院』は存在する。 表向きは内科から外科に精神科。美容形成、産科、避妊、性転換…と幅広く診察するが、いわゆる 闇医者であり、金銭に関わらず何かしらの“対価”を支払えば、いかなる困難な手術、瀕死の回復、 延命、あるいは違法レベルの身体改造や洗脳の類も行う、…と闇社会で評判のドクターである。 (なお、対価の支払いを拒んだ者は謎の死を遂げる事が多い) そんな彼にはもう一つの姿がある。───『魔物専門のドクター』である。 『こよみ医院』はちょうど池袋と『幻朧城塞』の境界に位置し、普段は魔物の患者が彼の医療を求めて 詰め寄せるようだ。(そして何故か魔物の患者と人間の患者は鉢合わせしない) そんな彼の現在の命題は「刹那にして永遠」といった言葉にすれば抽象的であり、常人には理解し難 いものであるのだが、彼の行う意味深な行動の全てはこの命題のために行われるものだという。 ハンターズブラッドに参加する腕の良い魔狩人であるが、魔物による事件を『往診』。依頼者を『患者』 あるいは『被験者』。魔物との戦闘を『手術(オペ)』になぞらえる癖をもつ。 同時に潔癖症であり、“素肌”での握手や他人との肌接触を極端に忌避する(他人に触れる際は清潔な 手袋を着用する)悪癖が存在する。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 魔物たちは彼の患者であると同時に被験者であるらしく、『こよみ医院』には何故か『霊安室(モルグ)』 とよばれる地下室が存在し、そこで何か怪しげな研究を行っている。 魔物に関わる理由もその研究…特に“羽根”が彼の研究テーマである「刹那にして永遠」と密接な関係 にあるようだ。 【セッションボーナス】 【成長記録】 【特記事項】 【コンセンサス一覧】 男性役(攻め手)が基本のキャラです。 また一応同意を求めますが、洗脳、改造、調教といった要素も想定していますのでご了承ください。 その他推奨・NG事項:
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そのころ、第七学区のいつもの病院にいる浜滝はというと… 「どうして入院しなければならないんだ。」 「はまづら仕方が無いよ。あのゴーレムをまともに肩に当たったんだから。」 浜面は今、入院する事になって病室にいた。 なぜ、浜面が入院しなくてはいけなくなったのかは数十分前… 「「にゅっ、入院!!」」 「そのとうりだが、見たら複雑骨折していたからな。私の手なら今日中には治せたけど、今日一日は安静にしたほうが良いからな。」 という事で浜面は今日、エリハル弐号機のせいで複雑骨折していたもんで入院する事になっていたのだ。 ちなみに、闇咲は今は一緒にいない。 「元々、罰ゲームではなかったのに初春さんに呼ばれて仕方なく付き合うことになったけど、どうして俺だけこうなるんだ?」 「はまづら、終わった事は遅いと思うよ。まあ、このあとのデートが無くなったのは嫌だったけど。」 「俺のせいでごめんな。でも、明日退院したらデートするから。」 「分かった。じゃあはまづら何か買ってくるから。と、その前に。」 というと滝壷は浜面にキスをした。 「じゃあ買ってくるね。」 滝壷は何か買ってくるために浜面の病室から出た。 そのころ、『喰わせ殺し』では盛り上がっていた。 まずは大所帯になってしまった初春達の個室だが、こちらは本当にカオス状態である。 「なるほど、白井さんが言っていたAIMジャマーが超効かない能力者って神裂さん達のことでしたか」 「絹旗、くれぐれも白井黒子達には秘密にしておいて下さい。我々の事情を知っているのなら分かってくれるでしょう?」 「超了解です。白井さんや固法先輩には私から超ごまかしておきますから」 黒子からAIMジャマーが効かない能力者がいるとは聞いていたが、それが神裂達だと知った絹旗は納得した。 絹旗はオルソラの乱の際、ずーっと天草式学園都市支部と一緒に行動し、魔術側の事情もその時に教えてもらっていたのだ。 「飾利だけじゃなく、こんな子まで私達の事情を知ってるとはね」 「絹旗なら問題は有りませんよシェリー。彼女は信頼できる子ですし、暗部のことも知っていますから我々のことにも理解がそれなりにありますから」 神裂とシェリーがこんな風に真面目な感じで話してる理由、それは単に初春が居ないからである。 その初春だが店長に罰ゲーム内容を収めた映像を皆で見られる場所を借りる為に、建宮と木山を伴って交渉に出ていた。 「妹こそ究極! 井ノ原姉、それがどうしてお前さんには分からんのにゃー!」 「寝言抜かすな、腐れシスコンが。 姉こそ最強だ! だからてめーはアホなんだよ土御門!」 こちらは顔を合わせて早々、妹と姉、どっちが素晴らしいかを激論している土御門と真昼。 その様子を真夜と彼に後ろから抱きついている赤音、そして彼氏の妹萌え全開発言に怒りを通り越して呆れている月夜が眺めていた。 「土御門も真昼さんも良く飽きないよなー。どっちが好きでも気持ちが本物なら上も下も無いのに」 「そうだよねー♪ 気持ちが本物なら二人同時でも実の姉弟でも問題ないもんねー♪ まるで私と真夜君と真昼ちゃんみたいに」 「……赤音ちゃん、変わったよね。すごく素直になった感じがするよ。井ノ原君のお陰なのかな?」 「まーね♪ 私の真夜君に対する愛、真夜君の私に対する愛がそうさせるんだー。でも月夜ちゃんも人のこと言えないと思うよ、私」 公然といちゃつく親友の赤音の変わりように月夜はちょっと嬉しく思いながらも、自分もああなのかと思うとちょっと恥ずかしくなっていた。 「ミサカは今日からおじさんの子供になるー! ってミサカはミサカは突拍子もないことを言ってみたり!」 「ぬうっ! そ、それは我の一存では決められぬし、そもそも反対なのである! ヴィリアンからも何か言って……ヴィリアンは?」 「なンか初春に付いて行っちまったぞ。色々お礼を言いたいからとか言ってよォ」 すっかり打ち止めに懐かれてしまったウィリアムは、未だに彼女を肩車したままで料理を口にしていた。 打ち止めの発言に異を唱えたのは彼女の保護者でもある黄泉川と芳川だった。 「あー、悪いけど打ち止め。あんたはウチの子だからそれは駄目じゃん。どうしてもってんなら一方通行は置いてけよ」 「ウィリアムさん、その子を養子にしたいのならもれなく一方通行が付いてくるわよ。それでも打ち止めを養子にする?」 「その少年は結局付いてくるのかそうでないのかどっちなのであるか! いや、そもそも我はこの少女を養子になどしないし、その少年はもっと要らないのである!」 実は昼間だというのにちょっとお酒を召し上がってる二人のペースにさしものウィリアムも途惑うことしか出来なかった。 自分を付属品扱いされて怒れる一方通行をいつの間にかウィリアムの肩から降りた打ち止めが、一生懸命慰めていた。 「二人って忍者さんなんですか! すごい! あたし初めて見ましたよ!」 「へ、へぇ、そうなんだ……。ところで佐天って言ったっけ? イギリス王室の王女様と一緒に来てたけどどうゆう関係なんだ?」 「知り合いです。パーティーをご一緒した仲ってだけですけど」 「それって凄いじゃないですか佐天氏! 半蔵様! これを機に私達も世界に目を向けましょう!」 半蔵と郭に興味を持った佐天は生で見る忍者に感動していたが、第三王女と知り合いだと驚かれるとは思っていなかった。 残るこの個室の利用者はインデックス、ステイル、小萌だが個室には居ない。 理由はインデックスが食欲全開で料理を個室に持ち帰らず平らげ、そんな少女をステイルと小萌が監視しているという、分かりやすいものだった。 「君はもうちょっと控えるべきだ。」 「そうですよシスターちゃん、先生の馬串がなくなってしまうんですよー!!」 「こもえはお酒を飲み過ぎなんだよ!!こもえこそ控えるべきなんだよ!!」 「そ、それは今は関係有りません!!シスターちゃんはシスターちゃんなのですから、神の教え通りに救われぬ子羊ちゃん達に救いの手をではないのですか!?」 「彼女のいう通りだ。少しはシスターとしての自覚を持ってほしいものだね」 「なっ!?タバコを年がら年中吸ってる二人に言われたく無いんだよ!!」 「「タバコが無い世界は地獄という(のです)!!」」 「ハモった!?」 「あっ、ステイルちゃんはまだ未成年なので吸っちゃダメなのです!!」 「さっきも言ったけどタバコが無い世界は地獄というと、一致したでしょう。」 「あわわわわ、タバコを先生に差し出してもダメなのですよ!!」 こうしてる間にもインデックスは食べ進めているのだが、二人はタバコ論議で気づかない。全く、困ったものです。 「まったく、どこに居ても食欲を慎むことを知らないシスターですわね」 「しゃあないって。あれがあの子のキャラゆうヤツやねんから」 インデックスの暴食をテーブルで自分達が持ってきた料理を食べながら観察しているのは青黒。 「それにしても料理をその場で食べるなんて非常識にも程がありますわ。ちゃんとルールは弁えてもらわないと」 「……なあ、黒子はん。せやったらあの子らも非常識の仲間や思うねんけど?」 「あの子達? んげっ!」 青ピが指差す方を見た黒子は女の子らしからぬ声を上げて驚いた。 そこにはインデックスと同じでその場で料理を食べている婚后、泡浮、湾内が人目を気にする事無く食べていたのだから。 「婚后さんはともかく、泡浮さんや湾内さんまであのようなことを……! ○○様、わたくしちょっと注意してまいりますわ」 同じ常盤台の生徒としてインデックスと同じことをされるのは恥ずかしいと思った黒子は婚后達に注意する。 「ちょっとそこのお三方。料理はそこで食べるものではなく、ちゃんと席に持ち帰ってから食べて下さいな」 「白井さん! あなたまでこちらにおいででしたの! ですが何を言ってますの? わたくし達と同じように食べてる方がいらっしゃるではありませんか」 「うぐっ……! あ、あれは特殊な例ですの! バイキング形式がどうゆうものか分かっていらっしゃらないんですの?」 自分達と同じようにしているインデックスを引き合いに出されて困る黒子だが、それでも婚后達に注意する。 しかし婚后の言うことを信じている泡浮が黒子に対して穏やかに反論する。 「立食パーティーみたいなものですわよね? でしたらわざわざ席に持ち帰る必要は無いと思いますが。ねえ? 婚后さん」 「は? あの泡浮さん、バイキング形式とはそもそも……なるほど、そうゆうことでしたの。分かりました、黒子が一から教えて差し上げましょう」 黒子は泡浮の発言に婚后のいつもの見栄っ張りが発動したと思い、バイキング形式の正しい説明をした。 その後で婚后のフォローをし、本人に泡浮と湾内に謝らせることに。 「本当に申し訳ございませんでしたわお二人とも。つい見栄を張ってしまい、あのようなことを……」 「気にしないで下さいまし。わたくし達はそんな婚后さんとお友達でいられて幸せなのですから」 「そうでございますわ。でも、次からはわたくし達に遠慮なく相談して下さいな。わたくし達はお友達なのですから」 更に仲良くなった3人を見た黒子は安心して青ピの所へ戻ろうとしたが、婚后からこんな提案がなされることに。 「ところで白井さんはお一人ですの?」 「え゛? ち、違いますわよ。連れというかわたくしの恋人が一緒なのですが……」 「本当ですの! それは是非ご挨拶しなければいけませんわ! この婚后光子のライバルの一人でもある白井さんの殿方、どのような方か興味がありますわ!」 「い、いや、そのような大層なお方では……いえ、立派なお方ですわ。ですがわざわざ挨拶するほどのことでは……。泡浮さんも湾内さんもお困りではありませんの?」 婚后一人なら力づくで黙らせるのだが、店内ということと人目が多いということから強行手段に出られない黒子。 仕方なく泡浮と湾内に話を振って何とかしようと思っていたのだが、お嬢様の好奇心を彼女は侮っていた。 「「わたくし達も白井さんがお付き合いされてる方にお会いしたいですわ♪」」 「……分かりましたわ(ど、どどどどうしましょう! ○○様は素敵な殿方、それは間違いありません。ですが! あの子達には刺激が強すぎますわ!)」 青ピのことは心から愛してる黒子ではあるが、婚后達の常識をある意味で凌駕してる点で不安だらけだった。 結局断るわけにも行かず、黒子は自分の恋人の青ピを紹介する為に婚后達を連れて自分の席へと戻ることに。 そのころ、神裂とシェリーはシェリーのある一言であることに気づいた。 「そういえば建宮はどこ行ったんだっけ?」 「たしか、飾利と一緒にビデオの交渉している……って」 「「あいつ、気づかない内に飾利と一緒に居やがる!」」 神裂とシェリーは自然に建宮が初春と一緒にいる事に気づいた。 そして、神裂とシェリーは初春の所に向った。 そのころの建宮達はというと… 「さっきから言ってるけど、そんな大勢で見れる所は無いんだよ。」 「ですから、そこを何とかしてくれませんか?」 初春達はビデオを見るのはOKと言われたが、見れる場所が無かったのだ。 「飾利姫が頼んでいるので、そこを何とかお願いしますよね!」 「分かった、分かった。そこまで言うなら何とかしてみるよ。」 という事で、場所は店長が何とかするということで交渉は終わった。 「建宮さん。ありがとうございます。これで何とか見れますね。」 「これも飾利姫の為にやった事なのよね。それに、飾利姫の為ならなんでもごふっ!」 建宮が何か言おうとしたらシェリーと神裂に殴られた。 「いきなり何をするのよね?」 「建宮、どさくさに紛れて飾利と一緒に居たでしょ。」 「そうだ。飾利と一緒に居ていいのは私だけだからな。」 「シェリー、あなたも何回言えば分かるんですかですか。」 さっきまで真面目に話していたシェリーと神裂は、さっきの仲は何のかけらも無く喧嘩していた。 また建宮だが、二人によって床で倒れている。 「そういえばヴィリアンさん。さっきは交渉していたものですみませんでした。」 初春は喧嘩している三人はほって置いて、さっきからいたヴィリアンと話し始めた。 ちなみに木山だが、交渉が終わるとすぐに個室に戻っていた。 「気にすることではない。私はただ、あなたに色々とお礼を言いたかっただけだから。」 「そうだったのですか。お礼なんて良いですよ。」 「私がお礼しないとすまないから。」 「分かりました。」 という事で、ヴィリアンは初春にお礼をした。 「ああ、飾利が王女様と普通に話してる……ああ、初春と言ってた頃が懐かしい。」 「ええと、確か上条からの紹介だったのか?王女様とのご対面って?」 「いいえ、飾利が兄さんの人間関係を極力調べ上げて、紹介してもらったんです。」 「なんか上条氏も初春氏も只者じゃないですね……」 「んであっちのおっさんは?もしかして歳の差カップル?」 ウィリアムは耳をピクンと立てたが三人は気にせず、 「王女様から聞いたんですけど、ウィリアムさんって言うらしくて、なんか命を助けられたみたいで、それからなんやかんやあったらしいですよ?」 「ちなみにそのなんやかんやが一番気になるんですけど?」 「それが教えてくれないんですよー、あっ、そういえば浜面さん?でしたっけ?あの人も危ないところ助けられたみたいですよ?」 「ほう、それは後でお礼しないとな……」 「それはいいいんじゃないですか?ウィリアムさんって兄さん…上条さんですけど…前殺そうとしたらしいですよ?」 「「どんな関係だよ!!」」 このウィリアムと上条との昔話は、必ずこのようなツッコミをするらしい。
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【名前】醍醐 朋樹(だいご ともき) 【性別】男 【所属】科学 【能力】 警備員としての武力を持ち合わせている程度で、 相手が能力者ならば時間稼ぎ程度の応戦はできないこともない。 ただし某シリアスをコミカルに対処する女警備員の様な冗談じみた実力は無い。 【概要】 新人警備員。元々研究職だった経験から鑑識官の様な役割を任されている。 警備員である以上教職に就いている筈だが、どの学校かは不明。 警備員の仕事柄風紀委員や他の学校の警備員の人との交流も多く、 先輩である美魔女の警備員に容赦なく教育的指導を受けている様子が多々見られる為 大多数の風紀委員からは「うだつの上がらないお兄さん」と認識されている。 世間では取るに足らないと軽視される者・物を汲み取り価値を見出す事が信条で、 その考え方は警備員の捜査で多分に活かされており若輩ながらも鑑識能力は一級品。 またその考え方の所為かなかなか物が捨てられず、自宅には用途不明の何かがごろごろ転がっている。 「繚乱家政女学校出身のかいがいしい後輩系通い妻がほしい、出来たらオプションとしてミニスカ膝枕で耳かきとか所望」 と実現の限り無く薄い妄想に思いをはせていたりする。 座右の銘は「一寸の虫にも五分の魂」。 牛乳が好きで、特にムサシノ牛乳に目が無い。これについて知り合いの原石の女の子から、 「『醍醐』だから牛乳好きっていう安直なキャラ付けなのでは……?」 と疑われているが、特にキャラ付的な意味はなく単純に好きなだけの模様。 研究者時代に、 「科学者は誰かと協力して研究を突き詰めていく以上、一部の天才以外はコミュ力が大事」 と豪語していただけあり、変わり者に対する適応力と対応力は高い。 しかしその対人能力の高さの所為か、 「一部の天才」の筆頭格である木原の少女に木原印の超高難度迷宮に監禁される、 これまた「一部の天才」にカウントされる性格に難アリな原石の少女のお守りを任される、 など、羨ましい様なそうでない様な面倒事に放り出される羽目になる事も少なくない。 特に上述の木原の少女にはヤンデレ紛いの致死率高めな嫌がらせを半ば個人的な趣味で弄ばれる事もしばしばで、 彼にとっての天敵とも言える存在。 曰く「視界に入っただけで脂汗が止まらない」らしい。 一級フラグ建築士とまでは行かないが女難の相があるようで、 彼のタイプである「癒し系エロカワ後輩通い妻」なる人物とは一向に巡り合える気配が無い。 【特徴】 鑑識官風の格好をした坊主頭の長身の成人男性。 風紀委員からおじさん扱いされるが、年齢は20代。 大学を卒業して数年程度だが学生からしてみればおじさんなのかもしれない。 【台詞】 唐突に迷言が出てくる。 「だーめだったらだーめよ、一生のお願いを安売りすんじゃねぇ」 「はー黄泉川先生相変わらずデケェんだから。ウチの先輩もあんくらいの包容力があれば精が出るってもんなんだが。まぁ、無いチチは絞れないってよく言っ―――――オゴフッ!!!!!?」 【SS使用条件】 とくになし
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血生臭い殺し合いの会場と化した平安京のどこかで、参加者の一人である、スーツを纏い、頭に白髪を生やした初老近い男性が怯えている。 前触れもなくいきなり死の恐怖に曝されればある種当然だろう。 だがこの怯え方は尋常ではない。 「嫌だ……死ぬのは嫌だ……」 先ほどからこれと同じようなことをブツブツと呟き、支給されていたサブマシンガンを構え、落ち着きなく辺りを見回し続けている。 なぜ見回すのかと問われたら、参加者が目に入った瞬間に引き金を引くつもりだからだ。 相手が殺し合いに乗っていようが乗っていまいが知ったことではない。 そんなことは見ただけでは分からないのだから。殺してしまえば絶対に安心だ。 これほどの恐怖を抱きながら、彼は警戒を続けていた。 「もう二度と……あんな思いは……」 彼の尋常ではない恐怖の原因は、死という物に対しての認識にある。 彼は一度死を体験している。 それも死に瀕したが奇跡の生還劇を演じたのではなく、実際に一度死亡し、その後に殺し合いに参加させられているのだ。 故に二度目の死に怯え、己にできる全霊を掛けて警戒しているのだ。 そんな彼の名は的場勇一郎。殺し合いに来る前までは不動高校というところで物理教えていた、もうすぐ定年になる冴えない教師だ。 ここからは、彼がなぜ一度死んだかを簡単に解説しよう。 それにはまず、不動高校の成り立ちから説明しなければならない。 不動高校はそもそも、かつて社屋を置いていた高畑製薬という会社が建物を寄付したところから開校している。 だが、実は高畑製薬は金で人を釣って新薬の人体実験を行った過去がある。 しかもその実験は失敗し、被験者は全員死亡。この事態を隠蔽するために、会社は被験者の死体を建物やその周りに隠して寄付したのだ。 学校になればそう簡単に建物を壊さないだろう、推測していたらしい。 的場はその死体が生徒に見つからないようにするために寝ずの番として高畑製薬から送り込まれ、教師をしていたのだ。 彼は学園六不思議として死体のある場所にちなんだ怪談を流し、生徒を近づけないようにしていた。 その後しばらくは平穏に教師として過ごし、かつて寄付した校舎が旧校舎となり、いつしか使命すら忘れかけていたが十年前、推理小説部の女子生徒、青山ちひろがこの怪談に興味を持つ。 彼女の調査の末、結果として真相を知り、的場に対しこの件を警察に通報すると通告。 的場はなんとか止めようとしてもみ合った結果、青山は階段から転落し事故死してしまう。 彼に殺意はなかったが、これがきっかけで過去が芋づる式に明かされることを恐れ、後に引けなくなった彼は旧校舎の楽器室に青山の死体を隠し、表向きには行方不明ということにした。 そして不思議を一つ増やし、学園七不思議として呪われた音楽室の怪談を流した。 それからしばらくして、推理小説部改めミステリー研が過去の楽器室を部室としたため顧問をかって出た。 しかし旧校舎も流石に古くなり、取り壊しの案が出始めたので彼は脅迫文を学校に送り付ける。 それと同時にミステリー研の部員の一人が、壁に埋められ、骨となった青山を発見。 その場に居合わせた的場は咄嗟に部員を殺害。これを自身が流した怪談と合わせて見立て殺人とした。 それを重く見られ、旧校舎の解体はなくなったが、その後骨を別の部員にまたも見られそうになり再び殺害。 そして三度目、別の部員にまたも見られそうになったので殺害しようとするも失敗。 最後には骨のことも彼が起こした連続殺人のことも、不動高校の生徒金田一一に調べられ、的場は全てを自供。 すると、実はその場にいた、青山ちひろの失踪の真相を調べていた彼女の父が的場を殺害。 彼は死の恐怖に怯えながら、自らの因果を払ってこの世を去った。 はずだが、気づけばこの殺し合いに巻き込まれていた。 最初は何が起こったのか分からなかったが、少女二人の首が爆破で吹き飛んだ時、彼は現状を理解し、二度目の死に怯えたのだ。 ガシャン 「!?」 いきなり謎の金属音が聞こえ、的場は迷うことなく銃を音のする方へ向ける。 すると、人影が見えたのでそのまま発砲。銃声が辺りにこだまする。 しかし、銃弾が命中したにもかかわらず人影は倒れるどころか怯みもせず、何事もなかったかのように的場の元へ近づいていく。 「う、うわあああああああああ!!」 銃で撃たれても死なない相手に完全な恐慌状態に陥った的場は、ただひたすらにサブマシンガンの引き金を引き続けた。 バチバチと火花が起き続けるが、それでも人影は意にも介さず的場に向かって進み続ける。 カチッカチッ とうとう的場のサブマシンガンの弾が切れ、弾幕が止んだ時火花もまた止み、その姿を見せた。 それは、とても奇妙な姿だった。 戦国時代の鎧をオレンジで模したものをあしらいつつも、全身を紺色のスーツを纏い、右手には刀を模したおもちゃの様な剣、左手にはオレンジを模した特徴的な剣を手に持っている。 そしてこの姿を知る者が見ればこう言うだろう。アーマードライダー鎧武、または仮面ライダー鎧武と。 ちなみに右手の剣は無双セイバー。左手の剣は大橙丸という。 しかしそんなことは知らない的場からすれば、謎のスーツを身に纏った誰かが銃弾も意に介さず自分に向かってくる恐怖の光景でしかない。 「や、やめてくれ!!」 今まで引き金を引き続けていたがついに弾切れに気付いた的場は、サブマシンガンを捨て逃げ出そうとする。 しかし初老の男性でしかない的場と、アーマードライダーの走力を比べれば一目瞭然。 あっという間に的場は追いつかれ、地面に蹴り倒された。 そして鎧武は容赦なく大橙丸を振りかぶる。 「い、嫌だ……二度も死ぬなんて嫌だ……!」 涙を流しながら、的場は懸命に命乞いの叫びをあげる。 しかし鎧武は聞き届けることなく、無言で剣を的場の体に突き刺した。 「た、助け……」 少しづつ命が消えていく感覚に怯え、地を這いながら助けを乞う的場。 しかしその声に答える者はいない。 やがて動かなくなり、彼の二度目の生涯はここで幕を閉じた。 【的場勇一郎@金田一少年の事件簿 死亡】 ◆ 鎧武は変身を解くと、中から20代後半くらいの青年が現れた。 彼の名前は六星竜一。先ほど彼が殺した的場と同じく、不動高校の教師だった男だ。 そんな六星が気になったのは、的場の最期の言葉だ。 「二度も死ぬなんて嫌だ、か」 まがりなりにもかつての同僚が、一体なぜそんな言葉を残したのか。 一度目は一体なぜ死んだのかについては、六星は気にしていなかったが、二度目という部分は引っかかった。 しかし引っかかりはしたが、疑ってはいなかった。 それもその筈。なぜなら―― 「俺は別に構わないけどな」 彼もまた、一度死んだ身だからだ。 なぜ六星竜一は一度死んだのか。的場について話した以上、六星についても簡単に説明しよう。 そのためには話は27年前にまで遡る。 27年前、青森県の六角村にてある惨劇が起こった。 そもそも六角村の山には野生の大麻が繁殖しており、それを栽培し村の上役が密売することで成り立った村である。 このことを知る者は少なかったが27年前、そのことに異を唱えた六角村の牧師夫妻が村の上役たちに殺害される。 さらに教会に放火し、牧師夫妻の養女七人を焼き殺して完全にこのことを隠滅しようともくろんだ。 しかし実際は一人、養女である詩織が、彼女と愛し合っていた村の上役一人にこっそり助けられ、彼女は村から離れ、表向き死んだことにしながら生活する。 その詩織の息子が六星竜一である。 詩織は息子である六星にあらゆることを叩き込んだ。 殺人術、格闘術、ナイフ、銃、演技力、さらには高校で教師ができる程度の学力を。 それもこれもすべては自身の恨みを晴らすため。 彼女は常日頃、竜一にこう言っていた。 『お前は母さんの代わりにあの連中に復讐するんだよ…… お前はあいつらを皆殺しにするために生まれてきたんだから!』 詩織が表向き死んでいるせいで戸籍を持てないため、彼らは極貧の中を生き延びた。 全ては復讐する為。それだけを糧に毎日を生きてきた。 そして時は流れ、村の上役の一つである時田家の娘、時田若葉が不動高校に入学した。 そこで彼女と接点を持つために、六星は不動高校に赴任してくるはずだった小田切進という男を殺害。 六星が小田切に成り代わり、不動高校で教師を務めながら若葉と恋仲になることで、彼女が卒業と同時に村に帰り、家が決めた婚約者と結婚パーティをする場で、彼は復讐計画を実行する時を待つことにした。 途中、予定外のトラブルで結婚が早まったり、若葉の同級生である金田一一と七瀬美雪が結婚式についてくることになるが、問題ないと六星は判断していた。 しかし現実には、復讐対象最後の一人を残した状態で金田一が真相を暴き、六星はやもなく追い詰められる。 だが六星は最後の一人をどさくさで殺害し、最後の締めとして大麻の畑を燃やそうとした。 しかし若葉の婚約者だった男や金田一が、様々な理由で彼を阻もうと立ちふさがる。 それでも畑を燃やそうとするが、直前で六星の父である村の上役に彼は殺害され、さらに父と母の真相を知り、驚愕の中命を落とした。 はずだが、彼もまたこうして殺し合いの場に立っている。 なぜ生き返ったのか、と考える気はなかった。 そして生き返ったとはいえ、何かやりたいこともなかった。 六星からすれば人生を賭した復讐も終わり、予定外や予想外は多々あれどやりたいことは全て完遂したと言っていい。 そんな状況で殺し合いに勝ち残ってまでしたいことなどないし、かと言って殺し合いに反逆し主催と戦うと考える人間でもなかった。 だが自殺する気も起きなかったので、とりあえず支給されたデイパックを漁り、出てきた変なベルトと付属されていたロックシードというものを、試しに使ってみることにした。 彼の人生にはほぼ無縁だった、好奇心というものである。 『オレンジ!』 付属されていた説明書きに従い、まずベルトを腰につけ、そしてロックシードをつけて、カッティングブレードを下ろす。 するといきなりベルトが音声を発し、さらには上から巨大なオレンジが被さる。 『ロック・オン!』 更に、被さったオレンジが軽妙な音楽と共に変形し、鎧と変わる。 『オレンジアームズ! 花道、オンステージ!!』 「うるせえベルトだな……」 そして変身終了。 ベルトが出す音声のやかましさに多少辟易しつつ、六星はとりあえず辺りを歩いてみることにした。 しばらくするとサブマシンガンを撃ってくる人影と遭遇。 別段自身の生に執着がないので、特に抵抗もせず弾を受けるが何のダメージもなければ行動に支障もない。 銃弾をものともしないスーツと、発砲者が同じ高校の教師で顔見知りだったことに驚きつつ、ある考えに思い至る。 それは、復讐の為に利用した若葉のことだった。 彼女は利用されているなど知らず六星を愛していたが、彼は若葉を復讐の道具に利用した。 その過程で若葉をそそのかして復讐相手を殺害させ、その直後に六星は彼女を殺害した。彼女もまた母の仇の娘であったがゆえに。 だが六星は若葉を愛していた。彼女も殺害対象だったにも拘らず。 だからこう思う。 人殺しに天国はありえない。 だがこんな殺し合いを開き、死者すらも自在に蘇生できる力の持ち主なら、地獄に落ちた女一人を天国に移住させるくらいはできるかもしれない。 この考えに至った瞬間、六星は殺し合いに乗った。 そして弾切れと同時に逃げ出そうとした的場を殺害し、今に至る。 「はっ」 曲がりなりにも顔見知りだった相手を殺しても、六星の心には小波すら立たない。 代わりに彼の頭を支配しているのは別のことだ。 「そこにいる奴、出て来いよ」 六星は家の陰に隠れている人間の気配を感じ取り、呼びかける。 すると意外にも素直に隠れていた人間が現れた。 整った顔立ちをした、六星よりも年は下であろう青年が姿を見せる。彼の真っ黒なスーツを身に纏うさまはさながら喪服だ。 彼は六星に怒りの視線を向けていた。それは人殺し、ひいては悪を許さぬ正義の意志だろうか。 それを感じ取った六星は、可笑しくてたまらなかった。 なぜなら視線の男は、六星が的場を殺すより前から視線を向けていたからである。 彼がもし殺し合いに反対するなら、六星の恐慌を止めようとするのが普通だ。 恐怖にかられたのなら、逃げるのが当然だ。 だが現実には、恐怖するわけでもなく殺しを止める訳でもなく、的場が死んでから現れたのだ。 これはもう六星と同じく殺し合いに乗っているとしか思えない。 「そんな怖い顔すんなよ。俺もお前も所詮同じムジナって奴なんだからよ」 「……っ! 話があります」 「ほう?」 六星の言葉に苦虫を嚙み潰したような顔を見せつつも、男は話を持ち掛けた。 それに六星はどうしようかと思ったが、その前に男が移動を提案した。 理由はすぐに分かる。何せさっきまで銃声がずっと響いていたのだ、そんなところで話し込むなど間抜けもいい所だろう。 ということで彼ら二人は平安京にある、先ほどまでいた地点から少し離れた家の中に移動し、中にあったちゃぶ台を挟んで座っていた。 家に入った二人の内、まずは六星が自己紹介を要求する。 これから話す相手の名前も知らないなど、話しにくくて仕方ないからだ。 「俺の名前は小田切――いや六星竜一だ」 「僕は夜神月。月と書いてライトだ」 変な名前だな、と六星は端的に思ったが、それは口にださず、代わりにさっき言っていた提案とは何かを問う。 月からもたらされた回答は、簡単に言うなら不戦協定だ。 参加者が何人いるか知らないが、最低でも数十人以上はいるであろうこの殺し合い。 この大人数で行われるゲームを、単独で勝ち抜くのは不可能だろう。 だからこそ、自身で何人か殺すとしても他に殺し合いに乗っている相手に殺してもらうのは必然だ。 「なので参加者が、そうだな……二十人を切るくらいまでは互いに不干渉。そしてお互いのことを話さない、というのはどうだ?」 「まあそりゃ構わねえが、一つ条件がある」 「条件?」 六星の言葉に月は訝し気になるが、六星にとっては大切なことだ。 そもそも、月は不可思議なスーツを身に纏い銃弾をはねのける様を見せている。 にも関わらず彼は一切怯んでいない。ということは、このスーツに対抗できる何かを持っているに違いない。 「そいつを見せろ」 「……断ると言ったら?」 月の挑発的な言葉と同時に背中から気配を感じた六星は、咄嗟に飛びのく。 するとさっきまでいたところには一本の矢が刺さっていた。 慌てて矢を撃った主を探し、そいつはすぐに見つかった。 何せ、窓の外にいたのだから。 矢の主は大きさこそ人間大だが、外見は人間と大きく異なっていた。 どう見ても機械の体に、右手には剣。左手にはクロスポウを構えた怪物が、そこに立っている。 「成程な。そいつがそうか」 「キラーマシン、というらしい」 「キラーマシン……ね」 かつて殺人マシンを名乗ったことのある六星は、多少の運命みたいなものを感じたが、それだけだ。 殺されかけたことは別に気にしていない。 あれで殺されていれば油断している大間抜けで、殺されなければ合格。そんなところだろう。 結果的に六星の要求にもこたえた以上、提案を受けることにした。 「まあ提案は受けてやってもいいが、仲良しこよしをするつもりもねえ。別行動させてもらうぜ」 「僕も仲良くする気はないが、少し待て」 家を出ていこうとした六星を引き留める月。 理由を問う六星だが、答えは簡単だった。 「今はないが、おそらく殺し合いの参加者の名前を載せた名簿みたいなものが配られるはずだ。 もし知っている名前があったら教えあおう。二手に分かれるのはそれからにしてくれ」 「あいよ」 月の言葉に納得した六星は、その場に腰を下ろす。 そして待つのは良いが無為に過ごす気はないとばかりに、二人は情報交換を開始した。 ◆ 六星と情報交換をしていく中、月は驚くべき事実がいくつも発覚した。 なんと、月にとって今は2010年だが、六星にとっては90年代の初頭だというのだ。 おまけに六星は死んだが蘇ったというのだ。 「ビックリしたか?」 せせら笑う六星だが、月は本当に驚愕しかできない。 なぜなら彼もまた、死人だからだ。 ここで夜神月がなぜ死んだか簡単に解説しよう。 三度目の長話になるが、付き合ってほしい。 夜神月は元々、警察官の父に優しい母、そして可愛い妹を持った高校生だった。 おまけに頭脳明晰でスポーツ万能、おまけにルックスよく正義感も強いと、まさに完璧超人だった。 しかしある日、空から落ちてきたノートを拾ったときに彼の運命は一変する。 そのノートは死神のもので、それは名前を書かれると死ぬというのだ。 最初はジョークだと思い、試しにテレビに出ていた犯罪者の名前を書くと、そいつは死んだ。 偶然かと思い、今度は町でたまたま見かけたタチの悪いナンパ男の名前書くと、そいつも死んだ。 このことにショックを受けた彼は、逃げるように世界の悪を裁くことを決意。 手始めに犯罪者の名前を書き続け、気づけば彼は悪を裁く神『キラ』としてもてはやされ始めていた。 しかし、そこにLという名探偵が待ったをかけ、キラは悪だと断言。 こうして月とLの頭脳戦が始まった。 その壮絶な頭脳戦を制したのは、月だった。 こうして敵を打ち倒し、彼は世界の主張をキラが正義の方向に傾けていく。 しかし、しばらくすると今度はLの後継者を名乗るものが月の前に立ちふさがった。 再び起こる頭脳戦だが、結果的に今度はLの後継者が勝利した。 それでもなんとか生き残ろうとするも、最期には月にノートを落とした死神に殺され彼の生涯は幕を下ろす。 はずだったが、彼はこうして生きている。 死神の力すら覆す主催者の力には驚嘆しかないが、この機を逃す手はない。 もう一度現世へと帰還し、願いの力で再び新世界の神となるのだ。 罪もない少女二人を殺しあざ笑う邪悪に組みするのは屈辱だが、今はそれを飲み込む。だが最終的には始末してやる。 そう決意を固める月だが、ふいにある仮説が浮かんだ。 (もしやこの殺し合いは、死者しか参加していないのか……?) 自分、六星、そして六星に殺されたあの男。 この三人は死んだ後から呼び出されたのは間違いない。 そこで考えたのは、この殺し合いが死者しかいない可能性だ。 かのカンダタみたく、地の底から地上に這い上がる最後の機会。 元の話では譲り合わないが故に皆死んだが、ここは譲り合っては生きていけない地獄変。 (いや、まだ断定するには早いな) しかし月はこの可能性を一旦捨てた。 おそらく数十人以上いるうち、自分を含めまだ三人しか死者と出会っていないのだ。 (それに懐のこれもある) 月は六星に分からないように懐にあるものをいじる。 彼の懐にあるもの、それはキラーマシンを従える魔法の筒だった。 この魔法の筒にキラーマシンが入っており、彼はそこから出してやることで外に解き放つことができる。 本来、この魔法の筒にモンスターを従える効果などないのだが、参加者でもない怪物が好きに暴れることを主催者が嫌ったのか、制限が加えられているのだ。 魔法の筒から出した参加者に、中のモンスターが従うようになる制限を。 (こんな怪物を僕は知らない。 となれば、ここは僕の常識が全く通用しない世界。だからこそ情報が重要だ) そう頭の中で結論を定めた月は、大人しく参加者名簿を待つことにした。 二人の死者の、生者を追い落とす殺し合いは、もう始まっている。 【六星竜一@金田一少年の事件簿】 [状態]:健康 [装備]:量産型戦極ドライバー@仮面ライダー鎧武、オレンジロックシード@仮面ライダー鎧武 [道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、的場のデイパック(基本支給品、ランダム支給品0~2、H K MP5(弾切れ)@現実) [思考・状況]基本方針:優勝狙い。若葉が地獄に落ちていたら、天国へ連れてってやる 1:参加者名簿が出てくるまで月と待つ 2:キラーマシン、か…… [備考] 参戦時期は死亡後です。 【夜神月@DEATH NOTE】 [状態]:健康 [装備]:魔法の筒@ドラゴンクエスト ダイの大冒険 [道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2 [思考・状況]基本方針:優勝狙い。現世へ帰還し、今度こそ神となる。 1:参加者名簿が出てくるまで六星と待つ 2:もしやこの殺し合いは、死者しか参加していない……? 3:いずれは主催も始末する [備考] 参戦時期は死亡後です。 魔法の筒@ドラゴンクエスト ダイの大冒険 に入っているモンスターはキラーマシン@ドラゴンクストシリーズ です。 この殺し合いは死人しか参加していない可能性を考えていますが、半信半疑です。 ※六星と月がいる家の外に、キラーマシン@ドラゴンクエストシリーズ が控えています。 【H K MP5@現実】 的場勇一郎に支給。 ドイツのヘッケラー コッホ社が設計したサブマシンガン。 命中精度の高さから、日本のSATなどの対テロ作戦部隊では標準的な装備となっている。 【量産型戦極ドライバー@仮面ライダー鎧武】 六星竜一に支給。 仮面ライダー鎧武における変身ベルト。 ロックシードと合わせて使うことで変身可能。 量産型とついているのは、このタイプだと所有者認定など無く、誰でも使用可能となる為。 【オレンジロックシード@仮面ライダー鎧武】 六星竜一に支給。 エナジーロックシードの一種。 戦極ドライバーに装填し、使用することでオレンジアームズへと変身可能となる。 上記の量産型戦極ドライバーと合わせて一つの支給品として扱われる。 【魔法の筒@ドラゴンクエスト ダイの大冒険】 夜神月に支給。 中にモンスターを一体封じ込められる魔法の筒。 「デルパ」と唱えることで筒から出し、「イルイル」と唱えることで筒へと戻すことができる。 更にこのロワのみ、魔法の筒の所有者に出したモンスターが従うようになっている。 裏を返せば、筒を奪われたり、所有者が死亡し別の参加者が新たに筒を手に入れた場合、モンスターが従う対象も新たな筒の所持者となる。 【キラーマシン@ドラゴンクエストシリーズ】 夜神月に支給された魔法の筒に入っているモンスター。 名前の通り、所持している剣や弓矢、内蔵されているビームを放ち人間を殺す機械のモンスター。 シリーズの扱いはまちまちだが、おおむね終盤の強力なモンスターとして扱われる。初期にはキラーマシーンと表記されていたことも。
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種類 株式会社 名称 株式会社 英名 Bank,Inc. 省略 所在地 〒-- 県市区番号 電話番号 ---(代表) 店舗数 店 業種 銀行業 代表 資本金 ,億Л 総資産 兆,億Л 貸出金残高 兆,億Л 預金残高 兆,億ШЛ 従業員数 . 経済-金融へ戻る
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黄泉津比良坂Corruption 第429話のタイトル及びBGM 現世と黄泉を繋ぐとされる坂が「黄泉津比良坂」である。 「Corruption」は腐敗、堕落、背徳、壊乱、汚濁という意味。 愚かな道化の狂った心境に相応しい曲であると言えよう。